6月15日 気になる副作用三題(6月12日号 Science Translational Medicine 掲載論文他)
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6月15日 気になる副作用三題(6月12日号 Science Translational Medicine 掲載論文他)

2024年6月15日
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今日は最近読んだ副作用に関する論文3題を紹介する。

まず最初は eClinical Medicine 6月号に掲載されたスウェーデン・ルンド大学からの論文で、2007年から2017年までにスウェーデンで登録された悪性リンパ腫の患者さん11905人について、様々な聞き取り調査を行い、何らかの入れ墨を入れた場合、悪性リンパ腫の発生頻度が1.2倍上昇し、さらに入れ墨後2年以内ではそのリスクが1.8倍になるという調査研究だ。入れ墨はマクロファージを使っていることなので、十分納得できる結果だが、スウェーデンで入れ墨を入れている確率がすでに2割近くになっているということに改めて驚いた。

次の European Heart Journal にオンライン掲載されテイルクリーブランドクリニックからの論文は55歳-72歳の中高年の血清のメタボローム検査を行い、キシリトール代謝物の量とその後3年の心臓血管疾患による死亡率を見ると、代謝物の多い人ほど死亡リスクが高いことを明らかにし、甘味料としてキシリトールを使うことの危険性を警告している。そして、この原因について、キシリトールが試験管内で血小板を活性化すること、さらにキシリトール摂取により血小板の凝集が著名に高まることを示し、これが心臓死が高まる原因であることを示している。かなり食品や飲料に使われている甘味料なので、緊急の検討が必要だと思う。

最後の6月12日号 Science Translational Medicine に掲載されたフライブルグ大学からの論文は PD-1 に対する抗体を用いたチェックポイント治療の副作用の一つが、直接ミクログリアに対する作用によるもので、脳内の神経炎症が上昇する結果、認知機能や運動機能が犯される可能性を示した研究だ。

覚えていただいているかどうか、昨年7月に PD-1 が神経系にも発現しており、抗体により記憶や学習能力が高まるという思いがけない結果を示したデューク大学の論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/22566)」。今日紹介する論文はこの全く逆で、PD-1 抗体治療による自己免疫性と考えられてきた神経症状の中には、抗体のミクログリア直接作用によるものが存在することを示している。

この論文も詳細を飛ばして簡単に紹介するが、ほとんどはマウスの実験で、正常マウスに PD-1 抗体を投与したとき、抗体は脳に入ってミクログリアの形態変化を誘導し、炎症型ミクログリアへの転換を誘導する。そして、ミクログリアの Syk キナーゼの活性化が炎症型ミクログリア形成に関わっており、Syk キナーゼ阻害剤投与で、PD-1 によって誘導される認知障害は軽減するという結果だ。最後に、PD-1 抗体を投与された人間の脳の解析でも、同じようなミクログリア活性化が存在することを示し、おそらく PD-1抗体投与による神経症状の一部は、ミクログリアへの直接作用であると結論している。

神経に働くと記憶が高まり、ミクログリアに働くと記憶が低下すると相反する論文が出ているので、読む側はどちらもにわかに信じられないと思ってしまうが、結論を得るためには、それぞれの細胞の PD-1 発現から始める地道な研究がまず必要かと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ