今日紹介するスタンフォード大学からの研究のタイトルはズバリ「The peptidergic control circuit for sighing(ため息のペプチド作動性のサーキット)」で、2月8日号のNatureに掲載されている。たまたまなのか、本当に最初からため息のメカニズムを標的にしていたのか?論文はため息の講釈から始まって、preBotCと呼ばれる領域がため息に関わってそうだというこれまでの研究を紹介し、ため息のプロセスがカエル由来のペプチドボンベシンにより影響されるという独自の研究に基づいて、マウスでもペプチドが生理的神経伝達因子であると狙いをつけている。
次に、マウスの呼吸に関わる後脳での遺伝子発現を探索し、neuromedinB(Nmb)をまずため息の神経因子の候補として特定している。Nmbの発現を調べると、期待どおりpreBotCに投射する神経細胞に発現している。また、NmbをpreBotCに注射するとため息の頻度が上昇し、逆にNmb受容体を欠損したマウスはため息の回数が半分に減る。しかしため息を完全に止めることができないので、さらに他のペプチドが存在することが疑われた。そこで、もう一つのボンベシンに似たペプチドgastrin releasing peptid(Grp)に狙いを定めpreBotCに注入すると、Nmbを超える効果が見られ、受容体遺伝子が欠損したマウスは、Nmb受容体と同様、ため息の回数が半減する。そして、両方の受容体機能を阻害剤で抑制するとため息の発生が強く抑制されることを示している。最後に、ボンベシンに細胞毒を結合させて、ラットのNmb受容体、Grp受容体を発現する細胞を障害すると、低酸素状態になっても深呼吸が起こらないことを確認している。
低酸素による深呼吸と、失恋によるため息が同じだとすると少し寂しい気はするが、ため息の回路を解明した論文を生きているうちに読めるとは、やはりため息が出る。
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