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2月22日:抑制性回路を強めて自己免疫疾患を治療する(Natureオンライン版掲載論文)

2016年2月22日
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    現大阪大学の坂口さんによって抑制性T細胞(Treg)が発見されて以来、自己抗原に対する自己免疫反応はTregがうまく働かないために起こることが一つの原因であることが明らかになった。このことから、自己免疫病の治療の切り札として、自己抗原に対するTregを強めればいいことはわかっていたが、Treg優勢の免疫系が回復する方法の開発はうまくいっていない。
  今日紹介するカナダカルガリー大学からの論文は、酸化鉄をデキストランでコートしたナノ粒子にMHC抗原と自己免疫原性のペプチドをコートして注射するとTreg優位の免疫系が回復され病気が抑えられるという研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Expanding antigen-specific regulatory networks to treat autoimmunity (自己免疫の治療に抗原特異的抑制性ネットワークを増強する)」だ。
  調べてみるとこのグループは10年近く、ナノ粒子に、組織適合性抗原と自己免疫反応に関わる様々な抗原ペプチドの複合体をコートして投与すると、自己免疫性1型糖尿病を治すことができることを報告している。この研究は、彼らが発表し続けているこれまでの研究とあまり変わることがないが、糖尿病だけでなく自己免疫性脳炎モデルや、コラーゲン関節炎モデルでも同じ方法で自己免疫が抑制できることを示した点が評価されたのだろう。結局この研究の売りは、ナノ粒子による自己免疫制御可能性の発見が全てで、ヒト化マウスを用いた1型糖尿病モデルでも、この方法を利用できることが示唆されているので、症例を選んでぜひ臨床治験へと進めてほしい。酸化鉄のナノパーティクルが強い毒性を持つことはないように私には思える。
  もちろんメカニズムがはっきりしない場合、臨床応用へのハードルは高い。この研究でも、実際にどの分子が関わり、どの細胞が関わるかを詳細に調べている。まとめてしまうと、IL-10,インターフェロンなどが関与して、CD4TメモリーT細胞がTreg優勢に引っ張られ、B細胞や抗原提示細胞も免疫抑制の方向に傾くというシナリオだが、この研究についてはゴチャゴチャとわかりにくい。また、なぜナノ粒子がこの活性を持つのかについては全く答えがない。
  とはいえ、多発性硬化症やSLEなど、現在でも治療が難航している病気に関わるペプチドが一つでもわかれば免疫バランスを免疫抑制へと傾けられるなら、それで十分だ。論文のための論文で終わらないことを祈る。
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