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7月4日:ミクログリアの2面性(7月19日号Neuron掲載論文)

2017年7月4日
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以前紹介したように(http://aasj.jp/news/watch/7035)、アルツハイマー病治療薬の主流の一つはアミロイドβに対する抗体を使ってアミロイドを除去する治療法だ。この時、除去に活躍するのが脳内専門のマクロファージ、ミクログリアで、アミロイド除去という観点からはミクログリアが活発になるのが望ましいが、活性が上がりすぎて何か悪さをするのではという心配は常に残る。
   今日紹介するスイス・チューリッヒ大学からの論文はこのようなミクログリア細胞の2面性を示した研究で7月19日号に発行予定のNeuronに掲載された。タイトルは「TDP-43 depletion in microglia promotes amyloid clearance but also induces synapse loss (TDP-43除去によりミクログリアのアミロイド除去能力が上がるとともにシナプス喪失も誘導される)」だ。
   この研究ではこれまでゲノムワイド遺伝子スクリーニングで神経変性疾患との強い関連が示された18種類の遺伝子の発現を抑制したミクログリア細胞株を用いて、どの分子がアミロイド処理に関わるかを試験管内で調べ、TDP-43と呼ばれる核酸結合タンパクの抑制により、ミクログリアのアミロイド除去能力が著明に上昇することを見つけている。
  TDP-43はこれまでも家族性ALSの原因分子として注目されてきており、神経細胞での蓄積が変性の原因として研究されている。このため、著者らはこの分子のミクログリア機能に絞ってその後の研究を行っている。
   まず細胞株を用いた実験からTDP43発現が抑制されるとアミロイドの貪食だけでなく、細胞内での分解も促進することを確認し、次にミクログリア特異的にTDP-43が欠損したマウスを作成し、脳内でアミロイドの除去速度を調べ、期待通り除去が促進していることを明らかにしている。
   ところがこのマウスではアミロイド除去が促進されるだけでなく、シナプス喪失も促進されることが明らかになった。このシナプスロスには、アミロイドの貪食は無関係で、TDP-43機能が抑制されると、ミクログリアはシナプスを攻撃することになる。
   最後にでは実際の病気ではどうなのかをTDP-43が原因のALS患者さんのアルツハイマー病併発程度を調べることで確かめている。ここでも、TDP-43の発現が落ちるとアミロイド蓄積によるアルツハイマーの進行は抑えられるが、早期からシナプス喪失によると思われる認知機能低下が見られることから、TDP-43抑制によるミクログリアの活性化には、動物実験で見られるのと同じような両面性があることを示している。
   この話自体はなるほどと納得して終わる仕事で、TDP-43は神経だけでなく、ミクログリアについての機能も注目する必要があることがよくわかった。ただ、この論文を読んで、アミロイド除去を促進する過程で、TDP-43などを介するミクログリア機能を活性化してしまうと、抗体治療も逆効果になる懸念があるように思える。動物実験では、アミロイド蓄積が抑制されたかだけが重要な指標になってしまうため、同時に進むシナプスロスが見落とされると、臨床試験が失敗に終わってしまうことになる。このことを念頭において、アミロイド除去治療を進めることが今後求められるように思う。
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