今日は米国アカデミー紀要にRobert Wood Johnson医学校から発表されたパーキンソン病につながるシヌクレインの蓄積を抑える作用のあるコーヒーに含まれる化合物の話を選んでみた。タイトルは「Synergistic neuroprotection by coffee components eicosanoyl-5-hydroxytryptamide and caffeine in models of Parkinson’s disease and DLB (コーヒーに含まれるeicosanoyl-5-hydroxytryptamideとカフェインはパーキンソン病とレビー小体痴呆のモデルで神経細胞保護のために協調的に働く)」だ。
パーキンソン病の原因としてシヌクレインがリン酸化され沈殿する事で炎症が誘導され、これが黒質の神経細胞死を誘導することが考えられている。この時、シヌクレインのリン酸化を低下させるのがPP2Aと呼ばれる脱輪酸化酵素の働きだが、この働きを高めるのがPP2Aのメチル化で、PME-1と呼ばれる酵素により行われている。このPME-1のメチル化活性を、コーヒーの成分であるeicosanoyl-5-hydroxytryptamide(EHT)とカフェインがともに高める作用があることが知られていたが、この研究では両方の量をかなり減らして投与するとき(EHT12mg/kg, カフェイン50mg/Kg)、EHTとカフェインが両方協力してシヌクレインのリン酸化を低下させ、沈殿を防ぎ、パーキンソン病の進行を抑えてくれるかを確かめようとしている。
結果は期待通りで、
1)使った用量では単独では全く効果がないが、両方を毎日食べさせると神経症状が改善する。
2)これは、シヌクレインの脳内での蓄積が抑えられた結果で、
3)シヌクレインを注射する実験系でも、リン酸化を外してシヌクレインの除去につながり、
4)効果を示すメカニズムは、期待通りPP2Aの活性を高めてシヌクレインの脱リン酸化を高める結果で、
5)PP2Aの活性化は、両方の化合物によってPME-1によるPP2Aのメチル化が高まる結果だ。
という絵に描いたような話だ。
この結果にもとずいて、コーヒーを飲むことはパーキンソン病の発症や進行を抑えると結論している。これが全くガセネタというわけではないのは、もともとコーヒーを飲んでいる人にはパーキンソン病が少ないという統計があった。これまでその理由は全てカフェインの効果とされていたが、この研究ではEHTとカフェインが両方含まれているから効果があると結論している。
実際に使われた量を50kgの人間に換算しなおすとEHT600mg, カフェイン2.5gを1日摂取することになる。マウスは食事に混ぜると毎日食べていたようだが、もし安全なら合剤を処方する治療として、是非治験をやってほしいと思う。
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