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3月5日 腸管上皮の小胞体ストレスがIgAを誘導する(3月1日号Science掲載論文)

2019年3月5日
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様々な場所に生息する細菌叢に興味が集まってから、当然とはいえ上皮を通して分泌されるIgAの機能を特定しようとする研究が増えてきているように思う。色々読んでみると、IgAのことをあまり知らなかったことに気づく。

今日紹介するハーバード大学からの論文はIgAの一部はT細胞ではなく腸管上皮が小胞体ストレスを受けた時に誘導される分泌性シグナルにより誘導されるという研究で3月1日号のScienceに掲載された。タイトルは「Epithelial endoplasmic reticulum stress orchestrates a protective IgA response(上皮の小胞体のストレスは防御的IgA反応を調整する)だ。

この研究は小胞体ストレスを高めるXBP1遺伝子が欠損したマウスの小腸を調べるとIgAを分泌する形質細胞が上昇し、組織および血中のIgAが上昇することを発見したことに始まる。すなわち、腸管の上皮のERストレスが高まることで、IgA産生細胞が腸管で誘導されることがわかる。

もともと腸管上皮で小胞体ストレスが起こると、腸の炎症が起こることが知られているが、今回見つかったIgA産生細胞の増加は、炎症に対して促進的に働くのか、あるいは抑制的に働くのか、IgA遺伝子の定常部位が欠損したマウスのXBP1遺伝子を欠損させて調べている。IgAが産生できないマウス腸管上皮に小胞体ストレスがかかると、腸管の炎症が誘導されるが、その程度はXBP1ノックアウトだけのマウスと比べるとはるかに重症で、広い範囲に広がっている。また、IgAは発現できても、それを腸管の管腔内に分泌できなくしたマウスで同じストレスをかけると、同じように強い炎症が起こる。このことから、小胞体ストレスで起こる腸炎を、同じ刺激で誘導されるIgAは軽減していることが明らかになった。

このIgA産生細胞がどのように腸管内で用意されるかを様々なノックアウトマウスと掛け合わせて検討している。T細胞受容体が欠損したマウスでもERストレスでIgA産生細胞が誘導されることから、この上昇はT細胞に非依存的な反応であることを明らかにしている。

このようなT細胞非依存的抗体産生細胞は通常B1細胞と呼ばれるB細胞から分化してくるが、確かに小胞体ストレスが腸管上皮に加わると、腹腔内のB1B細胞が増殖する。さらに、片方は腸管で小胞体ストレスが、もう片方ではストレスがかからないマウスの血管をつないで血液だけ両方の個体を循環できるようにすると、ストレスのかかった方のB1B細胞がIgA産生細胞へと分化し、腸管に分布していることを示し、1)腸管上皮小胞体ストレス、2)B1B増殖分化因子の分泌、3)B1B細胞の増殖およびIgA産生細胞への分化、4)B1B細胞の腸管への移動、5)IgAによる腸内細菌叢の活動抑制、6)腸炎の抑制というシナリオが成立していることを示唆している。

最後に、小胞体ストレスで誘導される分化因子を調べる目的で、無菌動物を用いた実験を行い、IgAは細菌の作用を抑えて炎症を抑える作用を持つが、IgA自体の誘導には細菌叢は必要ないことも明らかにしている。

残念ながら、上皮が分泌するIgA産生細胞誘導のメカニズムは明らかになっていないが、抗原とは無関係に誘導されてきたIgAが細菌叢に作用して腸管の炎症を抑えるという現象を見つけたことは、B1B細胞の機能を知る上でも面白い実験だと思う

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