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4月27日 麻酔で興奮する神経細胞(6月5日発行予定Neuron掲載論文)

2019年4月27日
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静脈麻酔や内視鏡手術が増加したとはいえ、全身麻酔による手術は今でも大活躍していると思うが、なぜ全身麻酔が可能かについては、実はよくわかっていない。生化学的な解析から、麻酔剤はGABA受容体を抑制することで脳の活動性を下げる可能性が示唆されているが、最近ケタミンがグルタミン酸受容体を抑えることが明らかになり、ともかく脳活動を全般に下げるのが麻酔と考えることができる。

この考え方に対し、生理的な眠りとの関係を重視する人たちは、麻酔剤により特定の神経細胞がまず興奮し、そこからのシグナルが眠りを誘導するという考えが最近注目されている。今日紹介するデューク大学からの論文はこの考えに基づき、視床下部の視索上核の神経内分泌系に属する神経群が麻酔剤により刺激され、眠りを誘導することを明らかにした研究で6月5日号のNeuronに掲載された。タイトルは「A Common Neuroendocrine Substrate for Diverse General Anesthetics and Sleep(様々な全身麻酔と睡眠を誘導する共通の神経内分泌回路)」だ。

この研究は最初から全身麻酔で特別に活性化される神経細胞があると決めて、活動したばかりの神経を標識するFOSの発現を脳全体で調べると、確かに全体の神経活動は低下しているが、視索上核に興奮細胞の塊が見られることを、組織学的、生理学的に確認している。

この細胞の特性を調べると、これまで考えられていたGABA神経ではなく、バソプレシン、ディモルフィン、オキシトシンなどのペプチドホルモン作動性の神経であることが明らかになった。

あとは本当にこれら細胞の興奮が麻酔状態を誘導するか調べることになる。ただ、ペプチドホルモン作動性といっても多様なので、遺伝学的操作が難しいが、この研究では麻酔によって一度活性化された細胞を永続的に遺伝的にマークする方法を用いて、麻酔で活性化(AAN)される視索上核の細胞だけを遺伝子操作することに成功している。

この結果、化学物質で視索上核のAAN細胞を刺激できるように操作したマウスでは、刺激により周期の低い脳波を特徴とする睡眠(SWS)が誘導される。また、光遺伝学でこの領域を短期間刺激するだけでも、睡眠が促進され、また麻酔の効果が高まる。

逆に視索上核AANを除去したり、活動を抑えると、麻酔効果が短くなり、また睡眠が阻害される。

重要なのは様々な麻酔剤で同じ領域が興奮し、しかも睡眠が誘導される前にこの領域が活性化されることだ。さらに、これらの神経が下垂体と連結する神経内分泌系の細胞で、この興奮により神経だけでなく、様々な身体状態の調整を下垂体を通して行うことが可能になっていることになる。

データを見ると、差が大きくなかったり、またなぜ神経が興奮するのかという点については明らかではないが、この歳になってようやく麻酔がどう効くのか納得することができた。

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