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2月16日 「タバコをやめると太るから」はやめない理由にならない(2月号 The Lancet Diabetes-Endocrinology 掲載論文)(気になる治験研究5)

2020年2月16日

「タバコをやめると太る」という話はかなり確かな医学的事実で、2012年英国医学雑誌BMJに発表された多くの論文を再検討したメタアナリシス(BMJ2012;345:e4439、 doi: 10.1136/bmj.e4439)によると、やめてから12ヶ月で測定すると4.5Kgの体重増加がみられ、それもやめて3ヶ月で急速に増加することが示されている。実は私がタバコをやめた時もそうで、急速にメタボリックシンドロームになったので、医師の診察を受けたことがある。

この事実は、私も含めやめた人間からみると、タバコが体に悪かった証拠だと捉えるが、やめたくない人間にとっては、タバコをやめて肥満になった結果、様々な異常が出てはたまらないから、このままタバコを吸い続けようということになると思う。

今日紹介するハーバード大学からの論文は、禁煙率が高い米国医療従事者のコホートを使って「タバコをやめると太るから体に良くない」という考えが間違っていることを明らかにした調査研究で2月号のThe Lancet Diabetes-Endocrinologyに掲載された。タイトルは「Smoking cessation and weight change in relation to cardiovascular disease incidence and mortality in people with type1 diabetes: a population-based cohort study (タバコをやめることと体重の変化が2型糖尿病の患者さんの心臓病や死亡率に及ぼす影響)」だ。

私もそうだったが、タバコの害が叫ばれるようになりタバコをやめる必要が最も強かったのは医学医療に関わる人たちだった。この研究の対象は1976年時点で30−55歳だった12万人の看護師のコホートで、まさにその後禁煙の必要性を強く感じた集団といえる。これに加えて、1986年に始まった、やはり医療従事者の2年毎の健康の調査を対象に選んでいる。ただこの中から、コホート追跡中に2型糖尿病と診断された約1万人を選んでベースラインを一致させ、禁煙や体重増加の影響を直接見やすくしている。

一方、タバコの直接の影響を避けるため、コホートが始まるときに閉鎖性呼吸器疾患やガンにかかっている人は除外している。こうして選んだ対象者を、次に、喫煙歴が全くない、現在も喫煙中の2群に加えて、6年以上禁煙を続けている、タバコをやめてから2〜6年経過した群に分け、最後の群についてはやめた後増加した体重でさらに分けて、2014年まで追跡し、その間の心臓病発症率と、原因を問わない死亡率を比べている。

さて気になる結果だが、まず喫煙を続けた人の心臓病にかかる比率を1とすると、喫煙歴のない人は0.59と明確に低い。また、やめて6年以上経つ人では0.63で止めることの効果ははっきりしている。すなわち、いつでもタバコをやめることでその時点から心血管疾患にかかる可能性は低下し続けるが、それでも喫煙歴のない人と同じには到達しないという、これまでの傾向が確認されている。次にやめて2〜6年という人たちで、体重増加が禁煙効果を相殺するか調べたところ、ほとんど体重増加がなかった人が0.77に対して5kg以上増加した人で0.89で、やはり体重増加は新血管障害全般でみると、禁煙の効果を抑える可能性がある。

ただ死亡率で見ると、原因を問わない死亡率、心血管疾患で死亡する確率、さらにはガンによる死亡率は、すべて体重増加には影響されず、驚くことに体重増加が高い方が死亡率が少し低いという結果になっている。

2型糖尿病の医療従事者については、タバコをやめると体重が増えるからということは、禁煙の理由にならないが結論だ。

よく読んでみると、医療従事者に限っている点、2型糖尿病患者さんに限っている点など、どこまで一般的な話かわからないことも確かだ。ただ、禁煙して体重が増加した医療従事者というのが自分に合致している点で紹介したくなった。

2日前、糖尿病研究で有名なボストンのジョスリン研究所に仕事で行く用事があったが、0度近いというのに、室外でタバコを吸っている病院関係者を見かけた。ジョスリンでのシーンだけに、禁煙の難しさを改めて実感した。やめられてよかった。

カテゴリ:論文ウォッチ
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