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2月20日 40Hzで明滅する光によるサイトカイン誘導(2月5日号 Journal of Neuroscience 掲載論文)

2020年2月20日

昨年の3月、40Hzの光と音で同時に刺激すると、脳内のミクログリアが活性化され、アミロイドプラークを除去する結果、アルツハイマーモデルで記憶が改善するという驚くべき論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/9864)。更に驚いたのは、米国でこの40Hzの音と光を出すデバイスを販売している会社があるという事実だ(https://gammalighttherapy.com/)。米国の活力の源を見る感じがする。とはいえ実際には、光や音と脳波が同期してγ波が海馬で発生する結果だと解説したが、ではなぜγ波がミクログリアを活性するかはわかっていない。

今日紹介するアトランタ・エモリー大学からの論文は、40Hzの光の明滅(フリッカー)で刺激されたマウスの脳内でミクログリアを刺激するサイトカインが選択的に誘導されることを示した論文で2月5日号のJournal of Neuroscienceに掲載された。タイトルは「Gamma Visual Stimulation Induces a Neuroimmune Signaling Profile Distinct from Acute Neuroinflammation(視覚のγ刺激は急性炎症とは異なる神経免疫学的シグナルプロファイルを誘導する)」だ。

研究は単純で、マウスを40Hzフリッカーで1時間刺激し、すぐに視覚野を取り出して32種類のサイトカインの発現を見ているだけだ。ただ実験では、40Hzだけでなく、20Hz、波長がランダムに変わるフリッカー、そして明滅しない持続的光についても、サイトカインの発現誘導を調べている。

結果は明快で、40Hzのフリッカー刺激は多くのサイトカインを誘導するが、何と言っても高いのはミクログリアを刺激するM-CSF,IL-6,MIG,IL-4で、この結果は昨年3月に紹介したγ波によるミクログリア活性化と一致する。

驚くのは明滅しない光、あるいは波長がランダムに変わる光を当ててもサイトカインが誘導されることで、神経刺激で常にサイトカインが脳で誘導されているのかと思うと少し心配になる。ただ、40Hzフリッカーの場合、脳に急性炎症を誘導した場合のサイトカインとはまたくことなっており、炎症が起こると心配するほどではないと結論している。事実、行動を調べても、どの刺激でもほとんど変化はない。

不思議なことに、晒される光の性質により発現するサイトカインの種類が異なる点で、これを突き詰めていけば光で必要なサイトカインを脳内に誘導してがんと闘うことすら可能になるかもしれない。

個人的に興味を持ったのは、20Hzの刺激が他の刺激と比べて、サイトカインの発現全般を低下させることで、ひょっとしたら脳を休めるのに20Hzは使えるかもしれない。

ではなぜサイトカインが神経刺激で誘導できるのか?残念ながら最初の引き金は不明だが、TNFRファミリー分子が刺激され、NFkb活性化、MAPK活性化のカスケードが関わることを示している。

以上が結果で、ミクログリアと神経刺激のあいだの距離が縮まった。しかし、なぜ神経刺激でNFKbが活性化するのかは解明できていない。しかし、そんなことにはお構いなく、γ波ビジネスは加速していく気がする。

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