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2月21日 リンパ球が脂肪細胞への交感神経支配を誘導する(2月19日号 Nature 掲載論文 )

2020年2月21日
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かなり古くから神経系と免疫系の相互作用の存在は指摘されてきた。記憶は確かではないが、40年以上前、Cold Spring Harbor出版社からNeuroimmunologyについてそれぞれの分野のトップ研究者が寄稿した本があったような記憶がある。たしかに、両システムは多様な認識が可能で、記憶メカニズムを持っていたりと共通項は多いが、最終的に免疫系がなくても、神経系は正常であることが明らかになることで、両者をしいて結びつけることは下火になったように思う。

それでも詳細に眺めると、両者の不思議な依存性が見つかるようで、今日紹介するハーバード大学からの論文は脂肪細胞への交感神経支配がγδT細胞により誘導されていることを示す研究で2月19日号のNatureに掲載された。タイトルは「γδ T cells and adipocyte IL-17RC control fat innervation and thermogenesis (γδT細胞と脂肪細胞のIL-17受容体Cが脂肪細胞への神経支配と熱発生をコントロールする)」だ。

交換神経細胞は様々な組織に端末を伸ばしているが、なぜこれだけ多様な組織に合目的に神経支配を確立するのか確かに不思議だ。この研究は、寒さに晒された時、脂肪燃焼による熱の発生を調節する脂肪組織の交感神経支配が成立する過程が、免疫システムが欠損したRag2ノックアウトマウスで強く障害されているという発見から始まっている。

ではどのリンパ球が交感神経支配の成立に関わるか、様々なノックアウトマウスを検討し、意外なことにγδT細胞が欠損すると、交感神経支配が低下し、熱の形成が低下すること、そして脂肪組織のγδT細胞のほとんどはVγ6を抗原受容体として発現していることを明らかにする。

この発見を皮切りに、順番にノックアウトマウスを組み合わせてγδT細胞が交感神経支配成立に関わる過程を解析し、以下の結果を得ている。

  • γδT細胞の分泌するIL-17Fと脂肪細胞側のIL-17C受容体が交感神経支配の誘導に必須。
  • IL-17RC依存性の交感神経支配は脂肪細胞特異的。
  • γδT細胞の分泌するIL-17F で刺激された脂肪細胞はTGFβ1を分泌し、これが交感神経支配を誘導する。

以上が結果で、繰り返すとγδT細胞は炎症性サイトカインIL-17Fで脂肪細胞を刺激し、このシグナルにより誘導されたTGFβ1により交感神経支配が確立するという結論になる。

実際には神経系と免疫系が直接関わりあうという話ではなく、免疫系によりマークをつけられた脂肪細胞に神経支配が確立するという話だった。少し深めに解釈して、この図式をIL-17という炎症性サイトカインを用いる脂肪細胞と免疫細胞の相互作用がおこっている炎症サイトをめがけて交感神経支配が伸びてくるという話として捉えると、炎症と神経という問題にまで拡大する面白い話だと思った。

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