最近立て続けにNatureに考古学の論文が掲載されたので、今年の最後の2日間はこれらの論文を紹介することにした。まず最初は、デンマーク・オーフス大学からの論文で、C14同位元素の変化を利用して、デンマーク、Ribeで進むバイキング遺跡からの出土品を詳しく分析し、当時のバイキングの生業を調べた研究だ。タイトルは「Single-year radiocarbon dating anchors Viking Age trade cycles in time(個々の年度を放射性炭素で特定することでバイキングの貿易サイクルの時代を明らかに出来る)」で、12月22日Natureにオンライン掲載された。
放射性炭素による年代測定というと、どうしても放射性同位元素の減衰を指標に行う時代測定を考えてしまうが、炭素14については、太陽の活動にリンクした宇宙粒子により大きく変化し、これを年輪と組みあわせると、単年度レベルの時代測定が可能になることが知られている。最も有名なのは、我が国屋久杉の年輪分析から分かった775年に起こった大量の宇宙線飛来で、2012年Natureに掲載されている。
これまで、IntCal20というコンソーシアムにより、極めて詳しいC14の変化がチャートとして提供されていたが、この研究ではさらにこの精度を高めた年代チャートを作成し、これを元に骨や角などの生物年代を詳しく特定して、Ribeのバイキングの活動記録を作成している。
時代別の地層を特定した後、そこから出土する遺物を分析した結果をまとめると、Ribeでは紀元750年ぐらいから、ノルウェーと盛んに貿易が行われるようになり、その範囲は南はライン川まで及んでいたことを示している。従来考えられていたように、バイキングは海の民として基本的には中東からロシアまで広い範囲の貿易に関わっていたが、海賊行為は、貿易上の競争が高まることにより起こったという考えを支持している。
バイキングの海賊行為は、793年に起こったリンディスファーンの襲撃が有名だが、その後も785-910年頃からRibeでは中東のビーズなどが見つかっており、貿易がさらに広がったことを示している。
以上が結果で、この時代の記録が残っていない歴史については、今後かなり詳しい時代測定が可能になり、歴史と対応させることが出来るようになる。これは我が国でも同じで、記録外の様々なイベントを記録と参照出来るようになることで、歴史はさらに科学に近づくこと間違いない。