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11月17日 ネオアジュバント免疫療法効果の解析(10月27日 Nature オンライン掲載論文)

2022年11月17日
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切除可能な腫瘍をすぐ切除するのではなく、様々な抗腫瘍措置をしてから切除することは、ネオアジュバント治療といわれ、多くのガンでルーチンになりつつある。そして、免疫療法の効果が確認されるにつれ、免疫療法をネオアジュバントとして使う治験研究が増えてきた。この方法の最大の特徴は、切除組織を用いてネオアジュバント治療の効果が確認できることで、特に多くのパラメーターが変化する免疫系では意義が大きい。

今日紹介するジョンズホプキンス大学からの論文は、GVAX と呼ばれる細胞ワクチンと PD1 阻害抗体を組みあわせたネオアジュバント治療の効果を、膵臓ガン組織で調べた研究で、10月27日 Cancer Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Multi-omic analyses of changes in the tumor microenvironment of pancreatic adenocarcinoma following neoadjuvant treatment with anti-PD-1 therapy( PD1 抗体ネオアジュバント治療後に膵臓ガン微小環境で見られる変化のマルチオミックス解析 )」だ。

膵臓ガンのネオアジュバント免疫療法という意味では、貴重なデータだ。ただ、研究全体が何でもありで、ゴチャゴチャしすぎている印象がある。まず、免疫治療は抗 PD1 抗体だけでなく、GVAX と呼ばれる特殊なワクチンを用いている。

GVAX は、膵臓ガン細胞を GM-CSF を分泌するよう改変し、これを放射線照射した後抗原として注射するワクチンで、ガン免疫が強い患者さんに見られるガン周囲のリンパ組織集合を誘導するワクチンとして知られている。自己のガンではないので、ガン抗原のオーバーラップがあるかどうかは運次第だが、GM-CSF で免疫系を活性化することがポイントになっている。従って、この研究では GVAX と GVAX + PD1 抗体を比べる形になっている。

コントロールがないが、代わりに全ての患者さんで免疫治療前にバイオプシーを行い、治療前後の組織を比べることで、効果を見ている。

結果だが、GVAX 単独、あるいは GVAX + PD1 抗体で、腫瘍組織の免疫システムをかなり変化させることが可能で、またこの変化と予後は相関しているとまとめられるだろう。面白い点だけまとめると以下の様になる。

  1. PD1 抗体に関わらず、GVAX により腫瘍組織のリンパ球集合が誘導できる。この集合は治療前のバイオプシーでは認められない。
  2. 腫瘍組織の CD8、CD4T 細胞はどちらも PD1 抗体組み合わせで高い数値を示す。
  3. ワクチンだけの場合、治療前からキラー細胞が腫瘍組織にいるかどうかが、生存率を決める。一方、この差が PD1 投与群ではなくなる。
  4. これまで知られているように、治療前の腫瘍組織の好中球が多いと、特に PD1 と組みあわせたときの予後が悪い。その意味で、治療前のバイオプシーは重要で、今後 IL8 などを阻害することでこの状況を変えることで、治療効果を高める可能性がある。
  5. PD1 抗体治療により、腫瘍浸潤T細胞のクローナル増殖が観察できる。

他にもまだまだあると思うが、混乱するだけなので紹介はやめる。要するに、GVAX はリンパ球集合誘導という意味では効果があり、また PD1 抗体もT細胞の疲弊を抑え、クローン増殖を高める点は期待通りだが、その効果をさらに強めるために好中球のコントロールが重要であることが結論になる。特に目新しいわけではないが、実際の患者さんのネオアジュバント治療をここまでやったのが大きい。おそらく、これを積み重ねることで、さらに免疫療法を改良することが出来るだろう。我が国でここまで出来るようになるのは、いつのことだろう。

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