3月26日 Healthy Aging を実現する食事(3月24日 Nature Medicine オンライン掲載論文)
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3月26日 Healthy Aging を実現する食事(3月24日 Nature Medicine オンライン掲載論文)

2025年3月26日
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どんなコホート研究も20年以上の追跡されると、老化についての情報を得ることができるようになる。例えば、このブログで2月に紹介した死亡リスクを正確に反映する血液検査の開発などはその典型的な例といえる(https://aasj.jp/news/watch/26229)。多くの研究から分かるように Healthy aging に関わる最も重要な要因は生活習慣で、特に食事に関しては最も重要な調査項目になる。とはいえ、コホート参加者の食事を正確に評価することは簡単ではない。

今日紹介するモントリオール大学、ハーバード大学、そしてコペンハーゲン大学からなる国際チームからの論文は、1986年から始まった米国の前向きコホート参加者10万人について Healthy Aging に関わる食事のパターンを調査した研究で、3月24日 Nature Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Optimal dietary patterns for healthy aging(healthy agingのための至適な食事パターン)」だ。

これまでも食事と健康についての論文は読んできたが、多くの場合、たとえば地中海食の効果といったような特定の食事パターンかあるいは特定の食品について調べた研究だった。たとえば我国の久山コホートで牛乳の摂取は認知を防ぐといった研究になる。

これに対しこの研究では、4年ごとに行った詳しい食事についての質問調査から食事のパターンを一つの指標で評価するのではなく、国際的に用いられている8種類の評価法でそれぞれ調べ、そのスコアと様々な Aging の指標を比べている。このおかげで、同じ集団を用いてさまざまな食事のパターンを評価できている。

利用された指標は、1)健康的食事を評価する AHEI 、2)地中海食の度合いを評価する aMED 、3)高血圧を防ぐ食事の指標(DASH)、4)認知症防止を目指す食事指標 MIND 、5)ビーガンに近い度合いの指標 hPDI 、6)持続可能な地球を目指す指標 PHDI 、7)炎症を引き起こす食事指標 EDHP 、そして8)インシュリンを誘導する食事指標 EDHI になる。お分かりの通り、最後の2指標は悪い食事の指標になる。

それぞれの指標で5段階に分けて、healthy aging に関わる項目ごとに、高いスコアと低いスコアのの間でオッズ比を算定し、その食事の healthy aging への寄与度を調べている。全般的にこれまで用いられてきた健康食指標 AHEI は認知を含むさまざまな heathy aging を可能にしている。これに匹敵するのが果物や野菜を多く摂る食事の指標ともいえる、持続可能な地球のための食事指標 PHDI になる。

面白いのは、同じように植物を多く摂ることを心がける hPDI 指標は、healthy aging にそれほど寄与していない。すなわち、hPDI ではビーガンとの比較指標なので、魚や肉を取らないことが重要になっている。したがって、healthy aging には動物と植物をバランスよく食べることのほうが、植物だけにこだわるより良いことがわかる。

このように、この結果が示す食事のあり方は参考になる。栄養に関わる人は必見の論文だと思う。個人的には、LANCET が主催した EAT-LANCET で持続可能な食のシステムとしてまとめられた食事のあり方が、個人の健康にも一番合っていることがわかったことだ。すなわち、自分の健康を考えることが地球の健康を考えることになるというメッセージは、ぜひ心に留めたい。EAT-LANCETの日本語サマリーについては以下のURLから得ることができるのでぜひダウンロードしてほしい。(https://eatforum.org/content/uploads/2024/02/EAT-Lancet_Commission_Summary_Report_Japanese.pdf

カテゴリ:論文ウォッチ
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