昨年からハルビン(https://aasj.jp/news/watch/26958)、弁福洞(https://aasj.jp/news/watch/29598) と、これまで中国独自の旧人類として考えられてきた中期更新世の遺跡から出土した骨が、タンパク質解析からデニソワ人骨であることが示され、中国全土がデニソワ人の歴史を知る鍵となることがわかってきた。
ネアンデルタール人研究の中心がライプチヒのマックスプランク研究所であったように、今やデニソワ人研究の中心は、北京にある中国科学アカデミーの「脊椎動物古生物及び古人類学研究所」がその中心で、今日紹介する論文もこの研究所から、10月21日Natureに発表されている。タイトルは「The proteome of Middle Pleistocene Xujiayao and common Denisovan morphology(中期更新世の許家窯人のプロテオームとデニソワ人共通の形態)」だ。
この論文は1976年に許家窯で発掘された20体の様々な部位の旧人の骨についての解析で、アイソトープ検査により19万9千年から13万8千年前と年代がわかっている。これまで中国や東アジアではほとんどネアンデルタール人の骨は発見されず、その結果中国にはホモサピエンスでもネアンデルタールでもない旧人が存在したとして、様々な名前が付けられていた。許家窯人についてはホモサピエンスとネアンデルタールの中間として、ホモ・ユルエンシスと言う名前が付けられ、更には形態的特徴からHomo Sapiens Neanderthalensisと言った名前までついていた。
まずお得意のタンパク解析を2種類の骨について行い、アミノ酸変性の状態から更新世中期のタンパク質であることを確認した後、デニソワ人と他の旧人とを区別出来るコラーゲン1A2のアミノ酸配列を調べ、得られた全てのペプチドがデニソワ人型であることを明らかにしている。また得られた200を超すペプチドの配列の違いから、他のデニソーワ人と 許家窯人の衛陶関係も明らかにしている。
このようにデニソワ人と特定した跡で、許家窯から発掘した頭蓋の骨を他の頭蓋と形態的に比較し、ホモサピエンスとは完全に分離するが、後期ネアンデルタール人や東アジアの直立原人とは少しにたところのある、デニソワ人の頭蓋の特徴を抽出することに成功している。これにより、中国から出土する頭蓋については、形態的にかなり正確な種の特定が可能になると考えられる。Nature ダイジェストに今回の骨の顔の復元図が掲載されているので是非見てほしい(https://www.nature.com/articles/d41586-026-03360-0 )。我々アジアのホモサピエンス形成にもデニソワ人が寄与したのではと思わせる顔だ。
結果は以上で、中国全土から得られる中期更新世の骨から、ネアンデルタール人がほとんど発見されない東アジアではデニソワ人が広く分布し、しかもかなり多様化していたことがわかる。ただ、ハルビンのミトコンドリアDNAをのぞくと、ほとんどはタンパク質解析による特定で、最終的にはコラーゲンの多型でデニソワ人と特定しているのい。しかし、ホモサピエンスもネアンデルタールもこの場所の多型では同一なので、新しい原人でないと結論は出来ない気がする。もっと新しいホモサピエンスと共存した時代の骨が発掘され、DNA解析が進むと、ヨーロッパで明らかになったネアンデルタール人とホモサピエンスの交流の歴史と同じようなエキサイティングな歴史が浮き上がるのだろう。
