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1月10日:マウスの話だが横紋筋肉腫は血管内皮由来だった(1月8日Cancer Cell掲載論文)

2018年1月10日
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Rhabdomyosarcoma(横紋筋肉腫)は小児や青年に見られる肉腫で、特に、首より上部にできる肉腫はほぼ6−7割が10歳以下の小児に発症することが知られている。発症場所から考えて、横紋筋やその前駆細胞である衛星細胞が直接ガン化したとは考えにくいが、筋肉のアクチンやMyoDなどの発現が見られることから、横紋筋細胞への分化能を有する間質細胞由来の肉腫と考えられてきた。

今日紹介するテネシー州St.Jude小児病院からの論文は、少なくともマウスの横紋筋肉腫モデルは血管内皮への分化能を持つより未熟な細胞由来であるという結果を示した研究で1月8日号のCancer Cellに掲載された。タイトルは「Hedgehog pathway drives fusion-negative Rhabdomyosarcome initiated from non-myogenic endothelial progenytors(ヘッジホッグシグナル経路が筋肉には分化しない血管内皮前駆細胞から細胞融合のない横紋筋肉腫の発生を起動する)」だ。

多くの横紋筋肉腫の発症にはヘッジホッグ(hh)シグナル経路がガンのドライバーとして働いていることが知られており、このグループもhhの下流シグナルが入りっぱなしになるSmoothenの変異型遺伝子を導入したマウスモデルを用いて横紋筋肉腫誘導を行ってきている。ところが、これまで間質幹細胞に特異的という前提で使ってきたプロモーターの特異性が、思いの外広いことがわかり、実際にはどの細胞ががん化しているのかを探る研究を行ったのがこの研究だ。

結果は、この実験系でがん化している細胞は、胎児発生時に中胚葉から分化し、体内に広く分布する血管内皮細胞に分化能を有する前駆細胞であることを突き止める。そして、この血管内皮への分化能を示す前駆細胞が内皮細胞へ成熟する前に活性型smoothenが働くと、筋肉系へと分化し、横紋筋肉腫が発生することを突き止めている。面白いのは、横紋筋肉腫のもう一つのガンドライバーRasをsmoothenの代わりに用いると、横紋筋肉腫にはならず、血管内皮の性質を維持した血管肉腫ができる。このことは、未熟前駆細胞からの横紋筋肉腫発生には、hhシグナルによる横紋筋細胞への分化誘導が必要であることを示すとともに、Rasをドライバーにして発生する横紋筋肉腫は血管内皮とは別の起源により誘導されていることを示している。

最後に血管内皮起源をさらに確認するため、血管増殖因子の受容体陽性細胞でSmoothenを発現させる実験を行い、胎児の中にすでに横紋筋肉腫と言える細胞の増殖が見られることを確認している。

この結果が、人間にどこまで当てはまるのかについては、この研究だけで結論はできない。しかしhhシグナルが血管内皮の前駆細胞を分化させることについてはマウスも人間も同じと言えるので、おそらくSmoothen変異をドライバーとする横紋筋肉腫の中に、同じようなプロセスを経てガン化した肉腫が含まれているのは間違いないように思う。またこの結果は、大人になると消失するものの、かなり長期にわたって、このような多能性の前駆細胞が体内に存在していることの証明になっているように思う。これも、大人のガンとAYA世代のガンが別物であることのいい例だと思う。
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