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1月11日パーキンソン病関連論文2編 (1月9日号Neurology掲載論文他1編)

2018年1月11日
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私たちのNPOにはパーキンソン病の患者さんたちがよく立ち寄られる。そのため、私だけでなく、NPOのメンバー全員が、何か役に立つ情報がないかいつも探してくれている。そして、この数日の最大のトピックスが、理事の一人藤本さんが見つけてきたtechcrunchというキュレートサイトに出ていた、パーキンソン病の患者さんの足がすくむのを回避できるデバイス、レーザーシューズの記事だった(http://jp.techcrunch.com/2017/12/22/2017-12-21-laser-equipped-shoes-help-parkinsons-patients-take-the-next-step/)。 靴につけたレーザーから足を踏み出す目標になる線を地面に投射して歩行を助ける、極めて簡便なデバイスだが、グッドアイデアだと記事を見て感心した。幸いこの記事が紹介していた元の論文をダウンロードすることができたので、今日はこの Neurologyの論文とともに、わかりやすい論文を他にもう1編紹介する。 1. パーキンソン病の立ちすくみを軽減するレーザーシューズ(1月9日号Neurology掲載論文)
パーキンソン病が進行すると、歩行中に立ちすくむ症状(Freezing of gait:FOG)が出て、転倒などの原因になる。原因が理解できているわけではないが、次に踏み越えるべき線が地面に引いてあるとFOGを克服することができることがわかっている。もちろん、あらゆる場所に線を引いておくわけにはいかない。そこで開発されたのがレーザーシューズだ。

靴に組み込んだレーザー照射装置で歩くときに、目標線を地面に投射し続けるレーザーシューズの開発と、その効果の検証を行ったのが今回オランダのトゥウェンテ大学からの論文だ。

まずレーザーシューズだが、かかとが地面について体重がかかったときだけ進行方向に向かって直角の線が、地面についている側の靴から投射される仕組みになっており、歩いている限り約40cm前方に線が描かれる。これをめがけて、患者さんは足を下せばいい。

FOGを示した17人の患者さんにこの靴を履いてもらって、前後の歩行、カウントダウンしながらの歩行、命令に応じて回転する、ロードコーンを取ってくるなどの課題を行ってもらい、FOGが起こるかどうか調べる。

結果は期待以上で、L-ドーパの効果のオン状態、オフ状態何でもFOGをそれぞれ、37%、46%減らすことができる。そして、患者さんも自覚的に歩きやすくなったことを自覚できている。

どうして今までできなかったのかが不思議なぐらいだが、患者さん目線に立って初めて可能であることがわかる。

2、強いトレッドミルでの運動は進行を遅らせる(12月11日号JAMA Neurology掲載論文)
 コロラド大学からの論文で、128人のパーキンソン病の患者さんを無作為に3群に分け、トレッドミルで心拍数が最大心拍数の80%に保つ運動、60%に保つ運動を、1日30分、週4日、6ヶ月続けてもらい、運動しないグループと症状の進行を比べている。

結果だが、最大心拍数の80%になるよう調整した運動を6ヶ月続けたときだけ病気の進行がはっきりと抑えられている。医師の管理下で行っており、治験中に特に問題になる事故はなかったようだ。これは仕事をしながら続けられる治療法なので、取り入れればいいと思う。 いずれも明日から利用できる方法で、患者さん目線で多くの研究が行われていることを実感する。
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