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8月20日 CD4T /CD8T 相互作用のメカニズム(8月12日 Nature オンライン掲載論文)

2020年8月20日

私自身、ガンや新型コロナウイルスに対する免疫について書くとき、ともするとCD4T細胞とCD8T細胞が独立しているように扱ってしまうが、実際にはCD8キラー細胞が誘導され、記憶細胞へと分化するときにCD4T細胞の助けが必要であることが知られており、この反応にはIL−2やCD40が関与することが知られていた。

今日紹介するワシントン大学からの論文はガン免疫をモデルとしてCD4T細胞とCD8T細胞の相互作用の条件を調べた研究で8月12日Natureにオンライン掲載された。タイトルは「cDC1 prime and are licensed by CD4 + T cells to induce anti-tumour immunity (ガン免疫誘導時、cDC1はCD4T細胞を感作しまたCD4Tからライセンスを受ける)」だ。

この研究ではまずマウスにガンを移植するモデルで、CD8キラーT細胞が誘導されるとき、および記憶キラー細胞が呼び起こされるときに、抗体を用いてCD8、CD4T細胞をそれぞれ除去する実験を行い、両方の細胞がないとガン免疫が誘導できないことを確認している。これは重要なことで、例えば単独のガンのネオ抗原ペプチドで機能的なキラー活性は誘導できるのか心配になる。

何れにしても、キラー誘導にヘルパーが必要であることはすでに明らかにされている。この研究では、このヘルパー、キラー活性を誘導するときに必要な樹状細胞について焦点を当て研究している。樹状細胞は様々な種類に分けられるが、ガン免疫にはcDC1およびcDC2が関わるとされ、cDC1がキラーT細胞、cDC2がヘルパーT細胞誘導に関わると教科書的には理解されてきた。

この研究では次に、本来なら免疫が成立しない肉腫に卵白アルブミンを発現させるという系を用いて、このDCに関するドグマを再検討している。cDC1が存在しないマウスを用いてキラー細胞誘導を調べると、cDC1が必要なキラーT細胞は全く誘導できない。ただ、これまでの見解とは異なり、このマウスにアルブミン特異的CD4T細胞を移植すると増殖は抑えられる。すなわち、ガン細胞内で生成されるガン抗原に対する反応では、CD4T細胞の増殖にもcDC1が必要であることを示している。

さらに、cDC1だけでクラスI、クラスII組織適合性抗原(MHC)をノックアウトする実験系を用いて、細胞内で生成されるガン抗原に対するCD4T細胞の反応は、cDC1が発現するクラスII-MHCが必要であることを示し、またクラスIIがノックアウトされるとキラー細胞も誘導されないことから、cDC1だけがガン抗原に対するCD8キラーT、CD4ヘルパーTの両方を刺激するハブになっており、クラスII-MHC依存的ヘルパー細胞が誘導できないとキラーも誘導できないことを明らかにした。

最後にヘルパーT細胞がCD8細胞をヘルプするメカニズムについて検討し、おそらくリンパ節に移動したcDC1がCD4T細胞を誘導するとき、CD4T細胞からCD40刺激を同時に受けて活性化され、これがCD8キラー細胞の誘導と記憶に重要であることを、cDC1特異的CD40 ノックアウト実験から示している。

他にも様々な結果が示されているが、以上紹介したことでポイントはカバーできていると思う。すなわち、ガンの細胞性免疫に関して言えば、ガン細胞が一度cDC1に貪食されることで、ガン抗原がクラスI、クラスII-MHCに提示され、これによりヘルパー、キラー両細胞のハブになると同時に、自らもCD4T細胞により活性化されることで、CD8キラー反応に対するヘルパーT細胞の作用を媒介するという話だと思う。

ガン免疫だけでなく、ウイルスに対する細胞性免疫を考える意味でも、頭の整理ができた面白い研究だった。

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