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4月26日 IL24が皮膚損傷反応を指揮する(4月24日 Cell オンライン掲載論文)

2023年4月26日
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皮膚の損傷治癒というと生体内で経過が詳しく追えることから、高等動物の再生研究では最も進んでいると思っていたが、今日紹介するロックフェラー大学、Fuchs研究室からの論文を読んで、まだまだ解析を必要とする重要問題も存在していることがよくわかった。タイトルは「A tissue injury sensing and repair pathway distinct from host pathogen defense(病原体に対する反応とは異なる組織損傷の感知及び修復過程)」で、4月24日 Cell にオンライン掲載された。

様々なストレスによる自然炎症というスキームを知ってしまうと、入り口は様々でも結局同じストレス、炎症反応が誘導されると思い込んでしまうのだが、「損傷の感知特異的に誘導される損傷治癒も存在するのでは?」と問うたのがこの研究だ。

皮膚に上皮が削れる小さな傷をつけたとき、傷の縁に発現する遺伝子を調べ、想定外の分子IL24が損傷後1日目で、特に上皮幹細胞に強く発現することを発見する。無菌動物や免疫不全動物でも同じ反応が起こることから、一般的な自然免疫経路ではなく、IL24刺激により誘導されるSTAT3分子により引き金が引かれる過程であることを発見した。

そこでIL24を欠損したマウスを作成すると、全く正常に発生・成長するが、外傷による損傷治癒が4日ぐらい遅れる。組織的にこの遅れを調べると、傷の縁での上皮幹細胞の増殖が遅れるだけでなく、損傷部位の線維芽細胞の増殖が抑制され、さらに血管新生も抑えられる。また、同じ遅れは、IL24を上皮だけで欠損させた動物でも起こる。

次に損傷によりIL24を誘導する刺激を探していくと、損傷部位に生じる低酸素刺激によりHIF1αが活性化され、これがIL24の誘導に関わること、さらにはIL24シグナル自身もHIF1αと協調して、誘導されたIL24刺激が継続するように働いていることを明らかにしている。

以上の結果は、皮膚の損傷自体が低酸素、そしてIL24を誘導して、損傷治癒を組織化していることがわかる。損傷治癒自体は、この経路が存在しなくても起こるのだが、時間がかかる。

主な結果は以上だが、面白いのはIL24がグルコーストランスポーターであるGlut1の発現を高めて、グルコースからピルビン酸、乳酸への嫌気的過程を誘導している点で、ガンと同じように損傷部位の代謝をリプログラムして、変化に備えるところまでIL24が受け持っているのがわかる。また、マクロファージを、外来の光源処理に備える態勢をとらせることも面白い。すなわち、多くの過程を指揮している。

最終的な損傷治癒は起こるが、IL24自体で皮膚全体の増殖活性を高めることも示されており、ひょっとしたら褥瘡などの医療や美容にも使える気がする。読んでみると、特に驚くことはないが、重要な発見だと思う。

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