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5月27日 TNFの特徴をガン組織特異的後退で引き出す(5月24日号 Science Translational Medicine 掲載論文)

2023年5月27日
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Tumor necrosis factorは文字通り腫瘍壊死を誘導する因子として特定されてきたが、臨床応用では、炎症のメディエーターとして位置付けた研究が多く、主要壊死を目指した研究にはあまりお目にかかったことがない。

ところが今日紹介するチューリッヒ大学とバイオベンチャー・フィロゲンとの共同論文は、ガン組織に多く発現しているフィブロネクチンのスプライス型に対する抗体をTNFと結合させることで、典型的治療困難腫瘍グリオブラストーマを場合によっては根治まで持っていける可能性を示した研究で、5月24日号 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Targeted delivery of tumor necrosis factor in combination with CCNU induces a T cell–dependent regression of glioblastoma(腫瘍壊死因子の腫瘍組織特異的供給に抗ガン剤CCNUを併用することでグリオブラストーマのT細胞依存的萎縮を誘導できる)」だ。

このグループはガンに多いフィブロネクチンのスプライス型に対する抗体(L19)を様々なサイトカインに結合させ、グリオブラストーマへの効果を調べ、L19/TNFが高い腫瘍抑制効果を示すことを突き止めていた。

ただ単独投与では効果が完全ではないので、PD-1抗体、グリオブラストーマに最もよく使用される抗ガン剤CCNU、そして血管新生を抑える抗体B20をそれぞれL19/TNFと組み合わせてL19/TNFの効果が最大限になる組み合わせを探索している。

この治療はT細胞が関わると考えられるが、PD-1に対する後退はあまり効果がなく、実際にはCCNUと併用した時、最も高い効果が得られた。実際のデータでは、5匹中4匹で腫瘍の完全消失が観察されている。

そこでこの組み合わせの効果を組織学的に調べると、腫瘍の壊死とともに、免疫抑制的樹状細胞の低下及びT細胞の浸潤が見られる。すなわち、腫瘍が直接傷害されると同時に、炎症や免疫反応が誘導されることがわかった。

さらに、遺伝子発現を調べると、血管内皮の接着因子発現が上昇し、免疫抑制的なサイトカインやケモカインの発現が抑えられ、最終的に血管透過性が上昇、炎症性細胞が浸潤、免疫促進的環境が誘導されることがわかった。

以上の結果をもとに、L19/TNF+CCNU治療を6人のグリオブラストーマ患者さんに実験的に投与している。このうち5例はNGMTと呼ばれる最も悪性のグリオブラストーまで、再発例では腫瘍増大を止めることが望めない患者さんを選んでいる。

結果は上々で、治療を行えた5例前例で病気の進行を一定期間抑えることができ、1人の患者さんでは2年間全く再発なしに経過している。それ以外の患者さんも、ガンが再び増大しているが、平均生存期間が抗ガン剤だけの平均の4倍長く生存が可能になっている。

以上が結果で、名前の通り、TNFを腫瘍組織に濃縮することで腫瘍壊死、血管内皮活性化、炎症誘導、そしてガン免疫誘導を通して、総合的にガンを抑えてくれることが示された。まだ6例だが、期待できそうだ。

名前から考えるとガン治療の大本命になってもいいのに忘れていたTNFの復活なるか、注視していきたいと思う。

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