8月25日 24時間断食は発ガンリスクを上昇させる(8月21日 Nature オンライン掲載論文)
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8月25日 24時間断食は発ガンリスクを上昇させる(8月21日 Nature オンライン掲載論文)

2024年8月25日
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食べない時間が伸ばすことで血中グルコースを下げ、インシュリンの分泌を減らすことで、脂肪を燃やすことができる。この目的でさまざまな断食療法が行われるが、体全体の代謝に良いとされていることが、細胞レベルでは意外な効果を示す可能性がある。

今日紹介する MIT からの論文は、24時間断食の後食事を摂るサイクルが腸管の幹細胞増殖を刺激し、さらには腸上皮発ガンリスクを高めることを示した研究で、8月21日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Short-term post-fast refeeding enhances intestinal stemness via polyamines(短期の断食後の食事摂取は腸管幹細胞活性をポリアミンを通して高める)」だ。

この研究は、断食の長期効果を見るものではなく、24時間断食直後に食事を与えるプロトコルの短期効果について主に調べている。ただ、発ガン実験では、断食を1日おきに繰り返えすサイクルを10回続ける実験も加えている。

まず驚くのは一度24時間だけ断食を行い、すぐに食事を摂取させると、食事を再開して1日目で腸管上皮の DNA 合成が上昇することだ。もちろんその後普通に食事を摂取させると徐々に増殖は正常化する。細胞を取り出してオルガノイド形成能でも同じように確認できる。他にも、幹細胞をラベルして追跡する方法でも、幹細胞活性が高まっていることを確認できる。

断食なので当然インシュリンシグナルが重要な要素であると考えられ、下流の PI3K/AKT/mTOR の関与を調べると、期待通りこれらのシグナルが高まっており、阻害実験からこれが幹細胞活性の上昇に関わることを明らかにしている。

ただ、幹細胞活性に関わるのは単純な代謝活性の変化ではなく、mTOR の下流で働く Ornithine aminotransferase (OAT) の活性上昇で合成が上がるプトレシン、スペルミンなどのいわゆるポリアミンの合成が幹細胞活性を高めていることを、OAT 阻害実験により示している。

プトレシン、スペルミン、スペルミジンなどのポリアミンは細胞の増殖を下支えするシグナルとして知られており、この研究では elf5A をヒプシン化(eLF5A にスペルミンからアミノビチル鎖を取り込みリジンに転移し、さらに水酸化する反応で翻訳活性が高まる)することでタンパク質の合成が高まることが、幹細胞活性上昇に関わることを明らかにしている。

だとすると、当然発ガン過程を助ける可能性がある。そこで、ポリポーシスを誘導できる遺伝子操作マウスを用いて、24時間断食の効果を調べると、一回の断食で腫瘍の数が高まることが明らかになった。

最後に断食・接触サイクルを10回繰り返す実験を行い、腫瘍の数を調べると、繰り返すことでも腫瘍の数が増える。

以上が結果だが、断食直後に食事をとった後24時間が一番危険で、断食時にはこの現象は起こらない。また、断食期間が18時間以上続く必要があり、それ以下ではあまり効果がない。おそらくこれは、単純な代謝変化というよりは、ポリアミンの合成が elF5A を介してタンパク合成を高めるという極めて特殊な効果に媒介されているからだと思う。いずれにせよ、ファスティングが一般にも理解されるようになった今、その方法についてこのような詳しい研究が必要なことは言うまでもない。

カテゴリ:論文ウォッチ