9月18日 凝集TauをTauを使って除去する(9月13日 Cell オンライン掲載論文)
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9月18日 凝集TauをTauを使って除去する(9月13日 Cell オンライン掲載論文)

2024年9月18日
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細胞内で凝集した Tauタンパク質をユビキチン化してプロテアソームで分解できることが明らかになって、俄然、細胞内Tauを標的にした治療法の開発が進み出した。このブログでも、脂肪ミセルに包んだ抗体を鼻から投与し、脳内のTauを脳神経に届けて除去するテキサス大学の方法(https://aasj.jp/news/watch/24763)、そして細胞内のTauを認識するナノボディーにユビキチン化に関わる TRIM21のRing domain を結合させたキメラ遺伝子を脳内に導入して凝集Tauを分解させるケンブリッジ大学の遺伝子治療法(https://aasj.jp/news/watch/25114)を紹介した。

今日紹介するのは同じケンブリッジのグループとMRCが共同で発表した論文で、ナノボディーの代わりに凝集活性が強いTau自身を使って凝集Tauをユビキチン化する面白い遺伝子治療法の開発で、9月13日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Co-opting templated aggregation to degrade pathogenic tau assemblies and improve motor function(鋳型による凝集性を用いて病原性Tauを分解し運動機能を改善する)」だ。

凝集TauにTRIM21分子のRingドメインをリクルートしてユビキチン化するという原理は、ナノボディーを使った方法と全く同じだが、今回はなんと凝集力が高まった変異Tau自体にRingドメインを結合させ(Tau-Ring) 、この分子が自然に凝集Tauに集まる性質を利用して、凝集Tauをユビキチン化する、いわば毒をもって毒を制する方法だ。

期待通り Tau-Ring を発現させた細胞では、凝集Tauを加えても完全に分解される。この分解がユビキチン、ユビキチン化されたTauに結合するシャペロンVCP、そして分解するプロテアソームの経路で進むことを阻害剤の実験から、また凝集Tauは完全に分解され、他の神経に伝搬する小さな凝集を残さないこと、そしてRingドメインに変異を導入する実験で、Ringドメインがダイマーを形成することがユビキチン化に必須であることなどを明らかにしている。すなわち、凝集Tauの分解は、典型的なユビキチン・プロテアソーム経路で行われる。

次に、アルツハイマー病、進行性核上性麻痺と、異なる凝集形態をとるTau を、患者さんの脳から分離して、それぞれに対する活性を調べ、異なる形態をとるTau凝集塊も、この方法で完全に分解できることを明らかにしている。

そして最後は、脳に遺伝子を届けることができる新しいアデノウイルスにTau-Ring遺伝子を組み込み、Tau凝集により運動麻痺が起こるマウスモデルに静脈注射してTau-Ringが脳内の届けられること、それにより凝集Tauが分解され、その結果マウスの歩行機能が正常化することを明らかにしている。

以上が結果で、ナノボディー / Ring 論文と比べてみたが特に治療実験は異なるモデルが用いられているので比較がしにくい、おそらく遺伝子の大きさもそれほど違いがないので、効果については今後、実際の治験で試していくしかないと思う。いずれにせよ、どちらも治験が可能な材料はほぼ揃っているので、臨床での検討は遠くない話だと思う。Tau標的の治療可能性が揃ってきた。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月17日 ヘルスデータを様々な用途に利用するためのテクノロジーの開発(9月12日 Nature Medicine オンライン掲載論文他)

2024年9月17日
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東京オリンピックのレガシーの一環としてアスリートのゲノム解析を目指したプロジェクトが中止されたという。2017年度から始まったプロジェクトらしいが、後からアスリート選別や差別につながるという懸念が出て中止したようだ。一見、人権擁護からも当然のように見えるが、私には日本政府の研究補助に潜むあらゆる問題が表面化しているように見える。

元々遺伝学は違いを探す学問で、文字通り discriminate 、差別するための学問だ。ただ、社会的な意味で差別するのは、違いを受け取る社会の方で、ゲノム研究のためには、最初から個人のセキュリティーを守る仕組みを考えておく必要がある。多くのサンプルを採取するのに膨大なお金を使った後、差別はダメと研究を中止するとしたら、最初から計画がゲノムを調べるようにできていなかったことになり、計画立案者はもとより、それを審査した専門家、予算をつけた役人の全ては何らかの処分を受ける必要がある。要するに、杜撰なプロジェクトを、東京五輪というバブルに乗せて始めたことが問題だ。

これに限らず、日本では個人データの典型である医療データを統一的に構築し、将来の医療に役立てるための取り組みが、大きく遅れをとっているように思う。しかし、今政府が追いつこうと莫大なお金を投与している大規模言語モデル LLM を考えると、DNAを情報集約ポイントとする LLM と、自然言語を情報集約とする LLM が統合される重要な分野で、その意味で日本人の健康データがまだまだ統合的に使えないということは、LLM の本当の進展を妨げると思う。

今日紹介する米国コロンビア大学から、そしてドイツ・ミュンヘンのヘルムホルツ研究所から発表された2篇の論文は、現状の電子化された健康レコード (EHR) を、疫学や病因解析に使えるようにストックするための方法開発論文で、どちらも Nature Medicine に掲載された。

どちらもオープンアクセスなのでぜひ自分で読んで欲しい。

最初のコロンビア大学からの論文は、アスリートゲノムでも問題になった究極の個人情報ゲノムをどのように他の EHR と統合し、しかもセキュリティーを守れるプラットフォームについての研究で、いわゆるブロックチエーン技術を EHR とゲノムデータ管理に使っている。

ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨に使われており、分散型ネットワーク、暗号化技術、そして新しいブロック追加や、ネットワークへのアクセスのすべてが記録されることで、誰が参加したかを明らかにしてセキュリティーを守る方法だ。

プラットフォームの詳細については全く理解していないが、このプラットフォームを ALS のデータセットと組み合わせて、重要な遺伝子の SNP を発見できることを示している。

ブロックチエーンは管理者ですら自由に変更を許さない分散型のネットワークで、レガシープロジェクトも中止するのではなく、このようなブロックチェーン型のデータ管理を導入する機会にしてほしい。

次のミュンヘン・ヘルムホルツセンターからの論文は、検査項目が完全には統一されていない現状の EHR からデータを集めて統一したプラットフォームを作り、それぞれの患者さんを異なる時点で把握した上で、特定のポピュレーションを抜き出して解析できるプラットフォームを確立している。わかりやすく言うと、single cell RNA sequencing データをもとに、個々の細胞の特徴を多次元空間にマップする解析方法と似たプラットフォームの構築だ。

ただ、single cell RNA sequencing と比べると EHR の形式が統一されていないなどの問題は大きく、様々なマルチモーダル EHR を整理し直して、それを一つの多次元情報を持ったベクトルとして管理する方法だ。

これにより、例えば子供の肺炎を、さらに詳しく分類したり、コロナ患者さんの肺病変と予後を予測したり、データに含まれているコンテクストを解析することができる。また、データコーディングについてさらに検討を加えれば、トークン化して LLM モデルも構築できる。要するに、最初から全部のデータを集めるというコホートではなく、実際の臨床記録を使えるようにするプラットフォームの解析で、重要な貢献だと思う。

このように、Nature Medicine には多くの臨床データ管理の研究が発表されるようになってきたが、日本のプレゼンスはほとんどないように思う。その一つの原因は、医学データのしまい方にもあるので、若者が自由にしかしセキュリティーを守ってデータを使って、新しいプラットフォームが作れるようにすることが、役所の重要な仕事だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月16日 迷走神経が空腸での脂肪吸収能を抑える(9月11日 Nature オンライン掲載論文)

2024年9月16日
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以前述べたことがあると思うが、多くの論文を読んでいると、著者を見ずに論文を読み進むうちに中国からの論文ではないかと気づくことがよくある。気づきの原因を探ると、まず普通考えない疑問にチャレンジするのだが、なぜ常識を疑ったのかの理由がはっきりしない。研究は最新の方法を組み合わせて行っているが、実験から実験の論理が飛ぶ。そして最後がちょっと尻切れトンボで、掲載するかどうかのボーダーラインにあるなといった感じの研究だ。

今日紹介する上海交通大学からの論文は、迷走神経が空腸上皮の細胞形態を調節して脂肪吸収を減らすという研究で、著者を気にせず読んでいるうち中国からの研究ではないかと途中で著者を見て納得した研究だ。論文のタイトルは「A brain-to-gut signal controls intestinal fat absorption(脳腸間シグナルが小腸の脂肪吸収を調節する)」だ。

この研究は最初から背側迷走神経核 (DMV) の刺激で高脂肪食による肥満を防げるかという実験を行っている。通常脂肪の吸収は胆汁で脂質はミセル化され、上皮に到達するとモノグリセリド、遊離脂肪酸は拡散で取り込まれてトリグリセライドが再合成され、カイロミクロンというキャリアーに詰め込まれる。あまり神経が関わる過程は見つからないのだが、DMVを抑制すると体重が減り、血中脂質が低下、便中の脂質は上昇する。

意外な結果で面白いが、なぜ DMV 抑制実験を行おうとしたのかについての理由が、幽門胃切除術+迷走神経除去手術で脂肪摂取が低下するからと言う少し無理な論理だ。しかし面白いが、脂肪摂取が抑えられる理由は様々考えられる。例えば、当然腸の運動が阻害されるはずで、この影響などを調べる必要があると思うが、空腸を支配する DMV 特異的に、脂肪吸収が抑えられるという結果だけで押し通している。

次の実験が、延髄のスライスを使った DMT 興奮抑制実験でクズの根に含まれるフラボノイドで、中国漢方で脳卒中に使われ、神経保護材として使われるプエラリンが、DMT の自然発火を抑制することを示し、また腹腔注射、あるいは脳に直接プエラリンを投与することで、脂肪摂取を抑え、体重を減らす効果がある。

突然プエラリンが出てくるという論理飛躍があるのも特徴だが、漢方との関わりが示唆されるので中国からの研究と確信した。ちなみに上海交通大学は漢方を近代医学と統合する研究が盛んで、これまでもこのブログで紹介した。とはいえ、急に漢方と関係があるプエラリンが出てくるのには驚く。しかし、プエラリンを飲んで脂肪吸収が抑えられるならいいと思うが、残念ながら経口投与実験が行われていない。

一方で、プエラリンがなぜ効果を持つのか、プエラリンをラベルして結合分子を GABA 受容体と特定し、受容体ノックアウトマウスを用いた証明や、クライオ電顕を用いてプエラリンの結合部位を決める研究などは、力量を感じる。

最後に、メカニズムの検討に移っているが、先に述べた空腸の運動についてはほとんど言及せず、すぐに腸上皮の形態変化を電顕で調べ、上皮細胞のブラッシュボーダーを形成している微絨毛の長さがプエラリン投与など DMV 抑制により短くなっていることを発見する。

以上をまとめると、DMV は刺激により腸上皮の微絨毛の長さを維持し、脂肪吸収を高めているという驚くべき結果だが、話はここで終わり、メカニズムについてはアプローチしないまま研究は終わっている。

最初述べた全ての要素が存在する典型的な中国の研究で、プエラリンを抗肥満薬に使えるかも知らないというアトラクションまであるが、しかし、細胞の形態変化を通じて脂肪吸収を抑えるとすると、プエラリンも長期に飲んだりすると問題になる気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月15日 進む遺伝子治療用ナノ粒子開発(9月10日 Cell オンライン掲載論文)

2024年9月15日
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Lipid nanoparticle (LNP) は Covid-19mRNA ワクチンデリバリーカプセルとして一躍有名になった。リポタンパクを感知する TLR4 を適当に刺激して、mRNA とともに自然免疫を誘導できるアジュバント効果を発揮し、強い免疫を誘導するのはまさにワクチン用にできていると思ってもいいベストマッチだった。

ところが遺伝子治療などの目的で使うためには、自然免疫誘導効果は大きな壁になる。このため様々な処方で自然免疫誘導活性を抑え、遺伝子導入効率を高める方法の開発が今も続けられている。

今日紹介するカナダアルベルタ大学と Entos Pharmaceutical 社からの論文は、 LPN にオルソレオウイルスの細胞侵入機構を併せて、これまでの LPN にはない性質を付与したデリバリーシステムについての研究で、9月10日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Safe and effective in vivo delivery of DNA and RNA using proteolipid vehicles( DNA と RNA を安全に効率よくデリバーできるタンパク・脂肪ビークル)」だ。

オルソレオウイルス粒子が細胞内に侵入する際に利用する FAST タンパク質に注目し、これを LPN に実装して細胞侵入を高めることができないかを調べている。

まず2種類の FASTタンパク質を単独、あるいは様々な部位を組み合わせたキメラタンパク質の細胞融合活性を調べ、至適な FASTタンパク質を完成させている。次に、このタンパク質はそのままにして、様々な脂質との組み合わせや、量比をスクリーニングし、最終的に導入効率の高い60nmという比較的大きな粒子を選んでいる。リポフェクタミンやよく使われる LNP と比べると、細胞毒性はほとんどなく、遺伝子導入効率も高い。

オルソレオウイルスの特徴は、細胞側の取り込み機構エンドサイトーシスを介さず、細胞質へ遺伝子を投入できる点で、遺伝子の変性が防げるのと、何よりもエンドゾーム内に発現している様々な TLR自然免疫刺激受容体刺激を避けることができる。この性質を FAST を組み込んだ LPN でも再現できるか調べており、まずエンドゾームに取り込まれる通常の LNP と異なり、6割が細胞質に直接遺伝子を注入できることを示している。

あとは使い勝手で、

  1. 静脈注射したとき、多くの臓器に分布して遺伝子発現を起こす能力が FAST は高い。一方、一般的な LNP はどうしても肺と肝臓にトラップされる傾向がある。
  2. 筋肉注射を行ったとき、比較したファイザーやモデルの LPN は肝臓や脾臓にも漏れ出るが、FAST はほとんど筋肉にとどまる。
  3. 期待通り、自然免疫誘導性はもちろん0ではないが強く抑えることができている。
  4. FAST は異物だが、強い免疫反応は起こっていない(ただ、繰り返し投与などの実験は行っていない)
  5. グリーンモンキーに静脈注射したとき、まず期待通り多くの臓器で遺伝子をデリバーできる。一方炎症性サイトカインは一過性に上昇するが、すぐに元に戻る。また FAST に対する抗体誘導も1匹で観察された。
  6. 最後に、全身にフォリスタチン遺伝子を導入して筋肉増強効果があることを確認している。

オルソレオウイルスを使うというのは面白いし、遺伝子発現ではトップとはいえないが、使い勝手ではすぐれた LNP ができたと思うが、Cell に掲載されているのには少し驚いた。元々カナダは筋肉研究が強く、この研究でも筋肉へのデリバリー実験まで行っていることを考えると、研究のゴールは筋ジストロフィーなどの治療を見据えているような気がする。とすると、結構いいデリバリーシステムが完成したといえる。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月14日 ラパ・ヌイ人古代ゲノム解析(9月11日 Nature オンライン掲載論文)

2024年9月14日
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今日紹介するコペンハーゲン大学、リジェネロン、そしてローザンヌ大学という国際チームからの論文は、フランスの博物館に保存されているラパ・ヌイ人のゲノム解析で、太平洋の孤島、イースター島の歴史を教えてくれる面白い研究。9月11日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Ancient Rapanui genomes reveal resilience and pre-European contact with the Americas(古代ラパ・ヌイゲノムはヨーロッパ人が接触する前のラパ・ヌイ人とアメリカ人の接触を明らかにした)」だ。

ラパ・ヌイ人といわれてもほとんどわからないが、モアイ像で有名な巨石文化を持ったイースター島の先住民で、ゲノム解析からなんとパプアニューギニアから海を渡って移住してきた民族であることがわかっている。以前パプアニューギニア人が長い船旅をいとわず太平洋の島々に移住した歴史についてのゲノム研究を紹介したので(https://aasj.jp/news/watch/15427)、ラパ・ヌイ人が何千キロも離れたイースター島に渡ってきたことは驚きではないが、この島の歴史にはいくつかの謎が残されていた。

一つ目の謎は、イースター島の悲劇の話で、ヨーロッパ人が奴隷として人々を連れ去り、また伝染病を持ち込んで民族がほとんど絶滅の危機にさらされた悲劇が歴史的にもよく知られているが、ヨーロッパ人との接触前の人間の愚かさを示す、もう一つの悲劇の話だ。すなわち、深い森で囲まれたイースター島の木を無秩序に切り出したため、生活必需品のカヌーが作れなくなり、文明が滅びたという話で、ヨーロッパ人と接触する前のゲノムの多様性解析から人口動態を調べ、この話の検証をまず行っている。

結果は、パプア人がイースター島に移住したときから緩やかに人口は増え続けていたことを示しており、人間の愚かさを示す逸話は間違いで、ヨーロッパ人がコンタクトしたとき3000人と報告されているイースター島の人口を、勝手にヨーロッパ人が人口減少の結果だと解釈した結果といえる。

もう一つの謎は、現在のラパ・ヌイ人に見られるアメリか原住民のゲノムが、ヨーロッパ人とのコンタクト前の交雑を示すのかという謎だ。ただラパ・ヌイ人がアメリカに渡ってまた戻ってきたという伝承はあるようだ。

この研究ではポリネシア人、アメリカ先住民、そしてラパ・ヌイ人のゲノムを比べ、人種形成過程を調べている。言うまでもなく、ラパ・ヌイ人がポリネシアゲノムを中核としていることがわかる。つぎに特にアンデスのアメリカ原住民のゲノムの流入がはっきりと認められ、25-30年で世代を計算すると、1300年から1400年の間にアメリカ先住民との交雑が起こったと考えられる。

結果は以上で、これ以上のことははっきりと結論できないが、この短い間におそらくラパ・ヌイ人は南アメリカに4000kmの旅をして、そこでアメリカ人と交流し、また島に戻ってきたのではないかと結論している。

その後ヨーロッパ人が来島し、結局最大の悲劇はこれに起因するのだが、その結果闇に葬られた民族の歴史がヨーロッパに残る標本のゲノムから明らかにされるとは皮肉だ。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月13日 女性の生殖年齢を決める遺伝的要因(9月11日 Nature オンライン掲載論文)

2024年9月13日
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人間の場合、生後卵子が増殖することはない。すなわち、生理が始まると生まれてきたときに持っている卵子をいくつかずつ活性化し、生殖に使わない場合は捨てていく。この活性化が始まるのが初潮で、活性化できなくなるのが閉経で、この間が女性の生殖年齢になる。これまでのゲノム解析により、この生殖年齢の個人差は大きく、なんとこの長さにかかわるコモンな多型は300種類近く知られている。しかもその多くは、DNA損傷修復に関わることから、生まれてから同じ卵子を維持することに我々が多くの投資をしていることがわかる。

今日紹介するケンブリッジ大学からの論文は、UK Biobank のエクソームデータから、アミノ酸変異を伴う変異で生殖年齢に大きな影響を持つ9種類の遺伝子を特定し、それぞれの意義について調べた研究で、9月11日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Genetic links between ovarian ageing, cancer risk and de novo mutation rates(卵子の老化とガンやデノボ変異との関係)」だ。

今回特定されたのは、タンパク質の変異が起こる遺伝子変異で、コモンな多型ではなく希な多型だ。従って、この変異を持つ人たちを発見して、生殖年齢が短いことをわかった上で、卵子凍結も含めた出産計画を考えてもらうことは重要になる。

この中の ZNF518A と名付けられた遺伝子は初潮が遅れ、閉経が早まるという強い影響を持つ。面白いことに、これまでコモン多型として特定されていた多くが、この転写因子の結合部位の多型であることが特定されたことで、この転写因子の卵子保存に関する重要性がうかがわれる。

次に、これらの変異が発ガンと関わるかを調べている。この9種類のうち、7種類がDNA修復に何らかの形で関わっており、また発ガンリスクとして有名な BRCA1 遺伝子も含まれている。当然のことながらBRCA1 は多くのガンのリスク遺伝子になっている。今回リストされた遺伝子のうち4種類が発ガンリスクを高めることが確認された。このうち3種類はすでに知られているが、今回新しく特定された SAMHD1 遺伝子の機能不全は、脳の炎症性変性疾患遺伝子として知られており、今回の研究で新たに、男性の前立腺ガン、男女の中皮腫のリスク遺伝子になることが示された。

最後は誰もが知りたいポイント、すなわち生殖年齢に大きな影響を持つ遺伝子は、突然変異蓄積に関わり、次世代の新しいデノボ変異の頻度を上げるかという問題が、親と子供のゲノム変異を調べるトリオコホート研究を使って調べている。2種類のデータセットを用いて調べているが、いずれのデータセットでも相関が認められた遺伝子は見つからなかった。他にも相関がないか様々な方法で調べ、今回リストした生殖年齢を短くする遺伝子変異は、デノボ変異を高めないと結論している、

多くの遺伝子がDNA損傷に関わる遺伝子であることを考えると意外な結果といえる。修復異常が発生すると、速やかに除去する機構があるのかもしれない。いずれにせよ、生殖年齢が短くなったからといって、不妊ではないことを考えると、子供のデノボ変異にほとんど影響がないという結果は重要だ。ただ、さらに対象の数を増やして確認してほしい。

以上、あまり目にしないユニークなゲノム研究だが、少子高齢化が進み、結婚年齢が遅くなっている先進国にとっては極めて重要な研究だと思う。是非、望まれる場合はお母さんのゲノムを調べることをルーチンにすれば良い。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月12日 ウイルス感染後の重傷の肺線維症モデルを作成する(9月4日 Nature オンライン掲載論文)

2024年9月12日
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Covid-19に感染後、ウイルスは消失しても様々な症状が続くケースは post-acute sequelae of SARS-CoV-2 (PASC) 、あるいは long covid とよばれ、感染者の10%−30%に見られるという報告がある。様々な PASC の中でも、2%ぐらいの患者さんで発症する、重度の肺炎・肺線維症は死に至る最も重要な状態で、治療法の開発が待たれる。

今日紹介するバージニア大学からの論文は、ウイルス感染後の肺繊維化をマウスモデルで再現し、治療の可能性を示した研究で、疾患も出る研究の重要性を示す論文だ。タイトルは「An aberrant immune–epithelial progenitor niche drives viral lung sequelae(免疫細胞と上皮の異常なニッチがウイルス感染後の後遺症を誘導する)」で、9月4日 Nature にオンライン掲載された。

Covid-19 後、ウイルス治療は成功しても、肺炎が持続、肺線維症に至ると肺移植しか治療方法がなくなる。調べてみると米国で行われる肺移植の10%は Covid-19 感染後の患者さんで行われている(https://humanmedicine.msu.edu/news/2024-lung-transplants-covid-patients.html)。この研究では肺移植を受けた患者さんから切除した肺を詳しく調べ、CD8T細胞とマクロファージがケラチン8(KRT8)を強く発現している異常上皮の周りにクラスターを作り、そこに繊維化が起こっている像が特徴的であることを発見する。

次に、マウスにウイルスを感染させ、同じような病変を誘導できるモデルマウスの作成に取りかかる。最初はCoV-2に感染できるようにしたマウスを用いて同じ病変ができないかいろいろ試しているが、肺炎、肺損傷が起こっても、同じような病変を再現することはできなかった。

そこで、自然感染可能なインフルエンザにスイッチして、トライアンドエラーを繰り返し、最終的に B5系統の老化マウスに感染させたときに、人間の肺で見られたのと同じ、CD8 /マクロファージ / KRT8 上皮を核とした肺病変を誘導できることを確認する。

こうして疾患モデルができると、次はメカニズムに基づく治療法開発に進む。この研究では、病変の核となっているCD8T細胞を除去することで、肺病変を抑えられるか調べている。末梢血の T細胞が低下するぐらいの抗CD8抗体では影響がないが、肺のCD8T細胞も除去できる濃度の抗体を用いると、炎症から繊維化を止めることができる。

そこで、CD8T細胞とその周りのマクロファージが分泌するサイトカインを調べ、TFN と γインターフェロンが T細胞から、IL-1β がマクロファージから分泌され、これが上皮をKRT8発現型へと変化させ、正常の修復を不可能にしていることを明らかにする。

そこで、感染後に TNF 及び γインターフェロンに対する抗体、あるいは IL-1β に対する抗体を用いて感染マウスを処理すると、KRT8上皮誘導を抑え、修復を促進できることを示している。

結果は以上で、モデルマウスを作成することで様々な治療可能性が示される典型的な研究だ。IL-1β は老化とともに上昇する典型的なサイトカインで、受容体抑制抗体は治験が行われているし、もちろん他のサイトカインに対する抗体も存在するので、タイミングを選べば肺線維症への発展を抑える治療になると期待される。さらに、インターフェロンの産生を抑える JAK 阻害剤バリシチニブが重症 Covid-19 の予後を改善することも知られていることから、是非標準治療プロトコルを確立してほしい。

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9月11日 薬剤開発が難しかった GTPase の隠れたポケットをこじ開ける(9月9日 Cell オンライン掲載論文)

2024年9月11日
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現在ガンなどの治療に使える様になった分子標的薬の多くは、ATP を基質にしてリン酸化を行うキナーゼ阻害剤だ。一方 Ras など多くのガンで変異が見られる GTPase は、多くの製薬会社が開発を諦めたぐらい小分子化合物が入り込む鍵穴がはっきりしなかった。

これをこじ開けるきっかけとなったのが K-Ras の12番目のグリシンがシステインに変異した部位のシステインと共有結合できる化合物の開発で、今や何種類もの薬剤が開発されるようになり、このブログでも何度も紹介してきた。この共有結合する化合物の利点は、特異的反応を確実に検出できることで、開発された化合物を他の GTPase の解析に使う可能性が生まれてきた。

今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文は、これまで K-Ras (G12C) 変異に対して開発されてきた共有結合型化合物を利用して、他の GTPase も含め薬剤開発が難しかった鍵穴をこじ開けられないか調べた研究で、9月9日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Targeting Ras-, Rho-, and Rab-family GTPases via a conserved cryptic pocket(Ras-、Rho-、 Rab-ファミリーの GTPase を標的にする薬剤開発を保存された隠れポケットを手がかりに進める)」だ。

タイトルの Cryptic pocket というのは、薬剤が結合して初めて明確になる分子の鍵穴のことで、K-Ras の場合共有結合型化合物が見つかったことで、K-Ras の鍵穴として同定された。当然同じような性質は、同じ Rasファミリーだけでなく、タイトルにある Rho-、Rab-ファミリー分子などの GTPase にも見られるのではと着想したのがこの研究だ。

手始めに、すでに開発されている10種類の化合物を、H-Ras、N-Ras の他の Rasファミリーとの結合を調べると、多くの化合物が H-Ras、N-Rasにも結合し、現在使われている sotorasib や JDQ443 は細胞レベルでも N-Ras に効果があることがわかった。すなわち、これらの薬剤は K-Ras 変異以外にも使える。

個人的に最も驚いたのは、H-Ras、N-Rasでも12番目がグリシンで、システインへの変異 G12C が起こることで、確かに GTPase の構造が極めて類似していることがよく理解できた。

次に同じように、Rho や Rabファミリーの分子についてもこれらの化合物の結合を調べ、Ras ほど強くないが、様々な部位に起こったシステインへの変異分子と結合する化傍物が見つかることを明らかにしている。

その上で、構造解析をベースにさらに多くの化合物を設計することで、Rho、Rabファミリー分子と比較的強く共有結合する分子を開発できることを示している。

また、このような隠れポケットへの結合だけで機能を阻害できない場合も、以前紹介した分子の構造変化を抑制するサイクロフィリンをリクルートするタイプの阻害剤(https://aasj.jp/news/watch/22741)利用可能であることまで示している。

他にも隠れポケットをこじ開けるための他の部位の構造についても解析しており、見えないポケットも必ず開けることができるので、共有結合型化合物を手がかりに、GTPase 全体を見渡した創薬が可能であることを示している。

化合物を設計する時代に間違いなく入っていることがよくわかる。

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9月10日 なんと IL-3 が直接感覚神経を刺激してかゆみを引き起こす(9月4日 Nature オンライン掲載論文)

2024年9月10日
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痒みを引き起こす過程については随分わかってきた。基本的にはさまざまなメディエーターが分泌され、直接感覚神経を刺激することで起こる。これまで治療が難しかったアレルギー性の痒みも、IL-4 や IL-13 が直接感覚神経に働くことで慢性の痒みの原因になることがわかり、これらに対する抗体治療でアレルギー反応を抑えるだけでなく、痒みを直接コントロールできるようになってきた。

ただ、それでも残る痒みは存在する。例えば、長芋に触れたとき、すぐに襲ってくるかゆみは免疫反応が誘導される前なのでよくわかっていない。今日紹介するハーバード大学からの論文はこのような刺激を受けて痒みを誘導するのが γδ T 細胞と、それが分泌する IL-3 であることを示した研究で、9月4日Nature にオンライン掲載された。タイトルは「A γδ T cell–IL-3 axis controls allergic responses through sensory neurons( γδ T 細胞と IL-3 が感覚神経を通してアレルギー反応を調節する)」だ。

この研究ではすぐにかゆみを誘導することが知られているパパイン投与モデルで、まずこの反応にリンパ球が関わるかから始めている。結果、リンパ球が完全に存在しない Rag2 ノックアウトマウスだけでなく、γδ T 細胞欠損マウスでもこの反応が起こらないことを発見する。

γδ T 細胞欠損マウスではパパインだけでなく、ハウスダスト、真菌、ヒアリや蚊の唾液などによる痒みも抑えられることから、アレルゲンの中には先ずこの経路でかゆみを誘導するものが存在することがわかる。この細胞を培養した上清を注射しておくと、パパインに対する反応がさらに高まることから、皮膚の γδ T 細胞の一部が最初の痒みの閾値を決めていることを発見する。

この発見が研究のハイライトで、あとはこの反応に関わる γδ T 細胞の種類、そして γδ T 細胞が分泌する痒みファクターの特定へと進んでいる。

まず γδ T 細胞だが、single cell RNA sequencing で遺伝子発現を調べると、通常の γδ T 細胞とは明確に異なり、γ4δ2 を発現する γδ T 細胞だが、樹状細胞集団に近いプロファイルを持っている。ただ、樹状細胞を除去してもこの痒みは残ることから、このかゆみはすべてこの細胞によって起こる。

この集団を GD3 と名付けているが、無菌マウスには存在せず、細菌叢との相互作用で誘導される。さらに老化で数は減るが、乾燥皮膚になると数が増えることから、乾燥皮膚のかゆみのかなりの部分がこの細胞による可能性はある。感覚神経がリンパ球の浸潤を促すことも知られているので、 GD3 細胞、感覚神経、そして細菌叢がネットワークを作って、アレルゲンが入ってきたシグナルを感知するシステムを作っていると考えられる。

次に、GD3 細胞が分泌する分子を皮膚で探索し、これまで感覚神経刺激として知られていた IL-4 や IL-13 ではなく、なんと血液幹細胞増殖やマスト細胞増殖に強い活性を持つ IL-3 が責任因子であることを特定する。

また、IL-3 の作用については、感覚神経の一部に IL-3 受容体が発現しており、IL-3 は感覚神経の閾値を変化させ、局所の刺激に反応しやすくなるよう調整していることを明らかにしている。さらに、IL-3 による感覚神経の刺激は、Jak2-STAT5 依存的で、かゆみの閾値変化については Jak2 阻害剤で抑えられる一方、STAT5 の下流は転写を通して substance P 分泌を誘導し、免疫系をアレルゲンの場所にリクルートして、免疫反応を助けることを示している。

以上、もう一度まとめると、痒みの直接刺激はアレルゲンが持っている物質特性(例えば酵素活性など)がおこなうが、その閾値を GD3 細胞が調節して、痒みの感覚を増大するとともに、免疫系を局所にリクルートして、その後のアレルギー反応を誘導するという話になる。人間でなくても痒いと当然ひっかくはずで、この行動も局所に血液細胞の浸潤を助けると思う。

我々のような古い世代は IL-3 を造血因子とマスト細胞増殖因子として位置づけていた。造血の方はこの研究と結びつかないが、マスト細胞はアレルギー反応の中心エフェクター細胞であることを考えると、マスト細胞もこのサーキットに位置づけられるのかもしれない。

また、この反応がアレルギーの最初の最初であることを考えると、IL-3 を抑える治療は意外と大きな効果があるのかもしれない。

カテゴリ:論文ウォッチ

9月9日 ピロトーシス誘導によるガン治療の可能性(9月6日 Cell オンライン掲載論文)

2024年9月9日
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炎症刺激により細胞に穴が空き、そこから様々な分子がこぼれでて、さらに炎症を悪化させる細胞の死に方をピロトーシスと呼び、炎症をなるべく起こさないように静かに死んでいくアポトーシスと区別している。もちろん生体にとって炎症は諸刃の刃だが、ガン免疫から見ると、ガン細胞がピロトーシスで死んでくれて、炎症が広がるとともにガン抗原が組織に漏れ出て、強い抗原刺激が起こることは望ましい効果といえる。ただ、多くの抗ガン剤や放射線はアポトーシスを誘導することが多く、ピロトーシスは期待できない。

今日紹介するハーバード大学からの論文は、ピロトーシスに関わるガスデルミンの一つ GSDMD を直接活性化する化合物により、ガンにピロトーシスを誘導する開発の研究で、9月6日 Cell にオンライン掲載された。タイトルは「Small-molecule GSDMD agonism in tumors stimulates antitumor immunity without toxicity(小分子化合物による GSDMD 活性化は毒性なしにガン免疫を刺激する)」だ。

我々は6種類のガスデルミン分子を持っているが、最もよく研究されているのは GSDMD で、特に細菌感染時にピロトーシスを誘導して、免疫を高めることが知られている。このとき、汗腺刺激でインフラマゾームが形成され、これが GSDMD 分子の一部を切り出すことで、自己抑制が外れて細胞膜に孔を形成するよう分子の集合が起こり、その孔を通って細胞内から炎症物質や抗原が流出する。

この研究では GSDMD を切断することなく抑制を外して孔を形成させる分子を探索、GLP-1 受容体活性化分子として知られていた 6,7-dichloro-2-methylsulfonyl-3-N-tertbutylaminoquinoxaline (DMB) を特定する。

この分子は GSDMD の191番目のシスティンに結合することで GSDMD を活性化し、タンパク質の切断なしに細胞膜に穴を開けることを確認する。

あとは、この作用がガン抑制に使えるか、GSDMD を発現している乳ガン株を移植する実験系を用いて調べている。驚くのは、DMB 注射だけで効果があることで、腹腔内注射によりガン増殖を抑制することができる。この抑制には免疫システムが必須で、DMB 投与により腫瘍局所へのキラーT細胞やNK細胞の浸潤が認められる。また、腫瘍から GSDMD 遺伝子を除くと、この効果は消える。

さらに、少ない量の DMB 投与をチェックポイント治療と組み合わせると、それぞれの単独投与がほとんど効かないガンでも抑制することができる。面白いのは、ガン細胞を試験管内で DMB 処理したあと、ガン細胞で免役すると、ガンワクチンのようにガンに対する免疫反応を誘導できる。

一方、副作用だが、この量の腹腔投与ではサイトカインストームなどは起こらないと結論している。

結果は以上で、メカニズムがわかったので、化合物の方をさらに設計し直すことで、より高い活性を持つ化合物へと発展させられるだろう。その過程で、GLP-1 アゴニストの作用も除去できるかもしれない。その上で、患者さんを用いた治験に進むことになるが、これにはまだまだクリアすべき問題がある。

もともと GSDMD が発現している方が予後がいいガンもあるが、多くのガンは GSDMD が高いと予後が悪い。おそらく炎症をガンが味方に引き寄せている可能性がある。従って、このような何もしないと予後が悪く、GSDMD を高発現しているガンを用いて、より強いピロトーシスの誘導がガン免疫を高めることを示すのが重要だと思う。これが可能なら、利用できるガンは多い。

次に副作用がないとしているが、全身投与よりは局所投与の方が良さそうに思える。おそらくネオアジュバントチェックポイント治療の機会に、まず局所投与によるピロトーシス誘導、免疫増強のあと、切除というプロトコルが一番良さそうな気がする。いずれにせよ、直接ピロトーシスを誘導できるこの化合物は、ピロトーシスの生理活性を調べる意味で重要なことは言うまでもない。

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