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12月6日:4塩基以外のコードを使うことができる(11月30日号Nature掲載論文)

2017年12月6日
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生命が地球上に誕生する過程についての研究を調べていると、最初の生命が、A/T/C/Gの4塩基を使う理由は充分あると思うが(例えばATPはエネルギー交換やセカンドメッセンジャーにも使われ、重要な生命機能の基礎になっていることから、ゲノムが誕生する前から生命系の高分子として使いやすくなっていた?)、ではこれ以外の塩基は使えないのかというと、そうではない。実際、多くの核酸アナログをDNA複製システムで利用することができる。しかし、既存の4塩基とは独立に複製、転写、翻訳を行える4塩基以外のコードが存在しうるのか興味ある問題だ。 今日紹介するカリフォルニアにあるSynthorxというベンチャー企業の研究所からの論文は、現存の大腸菌の中で4塩基以外のコードが使えることを示した研究で、11月30日号のNatureに掲載されている。タイトルは「A semi-synthetic organism that stores and retrieves increased genetic information(増加させた遺伝情報を維持し利用することができる半合成的生物)」だ。

4塩基以外の化学物質をDNAに取り込ませることは珍しいことではないが、多くの人工塩基はホストに検出され、除去修復される。ところが、3メトキシ-2-ナフチルグループを塩基の代わりに持つdNaMはDNAに取り込まれても大腸菌の除去修復にキャチされず複製される。この研究では、こうして取り込まれたdNaMをコードとしてタンパク質を合成できるか調べている。

この目的で、他のアミノ酸で置き換わっても蛍光を発するGFPの151番目のチロシンをセリンに置き換え、対応するコードを本来のTACからセリンのTAGあるいは人工塩基dNam(X)を持つAXCに変えたGFPを大腸菌に導入している。Xにペアリングする人工核酸にはTPT3(Y)を用いているが、両者は水素結合を介さないペアリングを行う。

アミノ酸をセリンにしたのは、セリンを結合したtRNAだけが、アンチコドンとは無関係にセリンを結合することができるため、セリンに対応するtRNAのアンチコドンをAXCとペアリングできるGYTに置き換えてもセリンに対応するtRNAとして機能できると予想できる。

こうして用意した大腸菌ではGYTをアンチコドンとして持ったtRNAを加えたときだけ、GFPが発現することから、人工核酸をコードとしてタンパク質が合成できることが明らかになった。

翻訳が正確に行われたかを調べているが、自然のtRNAと比べると他のアミノ酸が取り込まれる確率は上がるが、98%ちかくのGFPは正確にセリンが取り込まれている。また、セリンの代わりに古細菌が使うアミノ酸ピロリシンを取り込ませる実験で、確かに人工核酸がコードとして利用されていることを示している。最後に、同じ実験をazido-フェニルアラニン-tRNAでもできることを確認している。

以上の結果は、人工核酸を用いても、複製。転写、そして翻訳が可能なことを示した画期的な論文だと思う。特に、この過程に水素結合が必ずしも必要ないことを示した点も重要だと思う。ベンチャー企業を作ってこんな研究を行う米国の地力には恐れ入る。
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