大豆にはPhytoestrogen(植物エストロゲン)が含まれており、エストロゲン類似作用はあるがその程度は低く、普通に飲む程度では問題はないと思っていた。ところが、不勉強で全く知らなかったが、植物エストロジェンも乳児期に摂取すると、生殖組織の変化につながる危険があることがこれまでも指摘されていたようだ。
この研究は、おそらく乳糖不耐性のために大豆ミルクを利用する確率の高い黒人女性を対象にしたコホート研究参加者に、乳児期に大豆ミルクを摂取していたかどうかを聴取し、これが成人後の生理痛と相関するかどうかを調べている。詳細を省いて、結果だけを述べると、1553人の対象者のうち、豆乳ミルクを乳児期に摂取したことがある女性が198人と、11%を占めている。結構高い比率だ。
まず、初経後5年以内に生理痛で薬剤を飲んだ比率は、大豆ミルク群で20%高い。
そして、強い生理痛でピル(もともと生理痛に対して開発されている)を服用せざるを得なかった率は、大豆ミルク群で70%上昇している。
また、18−22歳の間で生理痛がいつも起こって困ったという経験を持つリスクは50%大豆ミルク群で上昇している。
以上が結果で、母数を考えると、もっと大規模な調査をぜひ続けて欲しいが、乳児期の大豆ミルクの使用には今の所は慎重になった方がいいという結論になる。多くの人は、なぜ乳児期に限った経験が成人してから影響を持つのか不思議に思われるかもしれないが、エストロゲンがエピジェネティックな変化を誘導する力、すなわち一回の経験で遺伝子発現パターンを長期間変化させる力は強いと考えられるから、個人的には十分あり得ると思う。とすると、他の変化も誘導されている可能性もある。早急に、大規模な疫学調査が行われることを期待する。
カテゴリ:論文ウォッチ