過去記事一覧
AASJホームページ > 2020年 > 4月 > 27日

AASJの友人 吉田尚弘さんからの特別寄稿:医師が新型コロナウイルスにかかったと思ったらどうするか?

2020年4月27日

COVID患者と濃厚接触した可能性が高くて、でも症状がないから自宅待機、後から発熱しても、
「熱が一週間程度続いてるくらいではPCR検査しない。検査体制も崩壊寸前なんだから医療者なら協力して我慢しろや。」
と、言われたら

自分なら

1. 家族や猫ちゃんとのスキンシップは控えて、別室で過ごす。寝るのも別室。食事も別の部屋で食べて、食器は紙の食器に割り箸。ゴミは自分でゴミ袋に詰めて、次亜塩素酸をしゅっしゅしてから廊下に出して捨ててもらう。
トイレも家族とは共用しない。シャワーは最後に浴びて、窓を開けて換気扇もまわす。洗濯物は次亜塩素酸をしゅっしゅしてしばらくしてからお願いする。

2. アルコールと精製糖質の摂取を控えて(ま、できる範囲で(・_・;)食物繊維とタンパク質をしっかり摂取する。ストレスをハイボールやカップ麺やチョコレートで解消しないようにね。

3. 亜鉛、ビタミンC、ビタミンDなどの免疫力を上げる可能性のある薬やサプリメントを意識的に摂る。納豆や豆腐などの大豆製品を意識的に摂る(ニコチアナミンにちょっと期待)。しっかり寝る。

4. 体温と併せて酸素飽和度をこまめにチェックして記録する(パルスオキシメーターは自宅用を買いました)。トイレまで歩く程度で95%下回るようなら重症化しかけてるからとすぐに連絡して検査、対処をお願いする。

発熱や咳などの明らかにCOVID感染を疑う症状があるけど重症化の兆しはないから引き続き自宅待機しなきゃ、なら

5. 氷冷、カロナール、麻黄湯で対症療法する。
凝固亢進がよろしくないのでトランサミンは服用しない。トランサミン入りの総合漢方薬も避ける。NSAIDsも避ける。

6. 肺の微小血栓による重症化予防に抗凝固剤、イグザレルト10mgを内服開始(血小板数が落ちてないことは前提)

7. TMPRSS2の阻害剤、カモスタットを600mg分3で内服開始(ナファモスタット注射の方がいいけどとりあえずこれで)

これだけやれば自宅待機中に重症化が一気に進む可能性は低いかなと期待する。

ただし、自宅待機に入る前に上述の内服薬は準備しておく必要がある。
自宅待機に入る前に血液・生化学検査も済ませておくこと。

これ、あくまでも医師である自分用の覚え書きです。お勧めしているわけではありませんのでご了承くださいね。

4月27日 経頭蓋磁気刺激によるうつ病治療の進歩 (American Journal of Psychiatry にオンライン掲載)

2020年4月27日

経頭蓋磁気刺激(TMS)は、脳の狙った場所に磁気により一定の周期の刺激を行い、領域内での神経結合を高めたり抑えたりする方法で、脳を操作する方法として実験に使われるだけでなく、難治性うつ病などの治療にも使われて、私もずっと注目してきた。うつ病の治療についてはこのホームページでも紹介した。

ただ、TMSを知った当時の新鮮な驚きが得られなかったためか、最近は紹介する機会が減っていた様に思う。しかし今日紹介するスタンフォード大学からの論文を読んで、うつ病のTMS治療も少しずつ改良が加えられ、信頼できる治療へ一歩一歩近づいていることを知った。タイトルは「Stanford Accelerated Intelligent Neuromodulation Therapy for Treatment-Resistant Depression (治療抵抗性のうつ病に対するスタンフォード式神経調節治療)」で、American Journal of Psychiatryにオンライン掲載された。

フォローしていないので、現在行われている方法と比べてどこが新しくなったのかは完全に把握しているわけではないが、

  • うつ病の場合左背外側前頭前野を標的にTMSが行われるが、この研究では治療前に、各患者さん個別に安静時機能的MRIを行い、神経結合性が低下している場所を標的にしてTMSを行なっている。
  • FDAで認められているθパルス治療は回路を回復させる必要量に達していないと考え、この研究では約5倍の量照射している。
  • 一定期間の休憩を挟んで何回もパルスを誘導する方が回路回復効果があるとするそれまでの研究結果に基づいてTMSセッションを計画している。

などが、スタンフォード式のポイントだと思う。

プロトコルを眺めると、2秒間隔で1800パルスを照射した後、50分休み、また照射休憩、とセッションを10回も繰り返す。すなわち一日中治療にかかりきりになる。機械の能力としては1日に4−5人はさばけるかもしれないが、コストは高くなりそうだ。

しかし効果はてきめんでだ。この研究にはうつ病発症から20年近く経過し、現在うつ病治療の切り札と言われるケタミンも含め様々な治療法にも反応しなかった患者さんだ。そのうつ病の重症度を示す指標(MADRS)が、治療中に劇的に変化して、退院時にはほとんど正常化している。また、徐々に悪化が見られるが、寛解状態を5週間維持することができる。TMS治療がうまくいかなかった患者さんでも同じ様に調べているが、この治療では同じ様に反応する。さらに、自殺の危険性を察知するアンケート方式の調査でも、劇的な改善が見られる。一方、照射中に倦怠感を感じたりすることはある様だが、大きな副作用は全く認められない。

実際の患者さんを見ないで、グラフだけでは実感はないのだが、驚くべき効果を発揮する治療に思える。我が国でも、TMSを用いたうつ病治療は徐々に導入されているが、この方法の有効性がさらに確認されれば、重症例には使える様にすることは大事だと感じた。TMSおそるべし。

カテゴリ:論文ウォッチ
2020年4月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930