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2月11日 1型糖尿病早期発見の努力(2月4日 米国アカデミー紀要オンライン掲載論文)

2021年2月11日
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先月、すでに臨床に利用されているTNFαに対するモノクローナル抗体が、診断後早期であれば、1型糖尿病の進行を遅らせることを示した治験論文を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/14635)。もし発症リスクのある患者さんをもっと早期に把握できれば、さらに様々な治療法が開発できる期待は大きい。この可能性を求めて、1型糖尿病の遺伝的リスクの高い子供さんを集めて発症までの経過を調べるコホート研究が世界中で行われている。

今日紹介するコロラド大学からの論文は、コホート研究で集まった臨床サンプルを用いて、発症に関わる自己抗原を探索した研究で2月4日米国アカデミー紀要にオンライン出版された。タイトルは「T-cell responses to hybrid insulin peptides prior to type 1 diabetes development(1型糖尿病発症前に見られるハイブリッドインシュリンペプチドに対するT細胞反応)」だ。

最近自己抗原の中には、細胞内でシトルリン化など、タンパク質ができてから様々な変更を受けた分子が存在することが示されてきた。インシュリンや膵臓ベータ細胞に対する自己抗体が検出されている1型糖尿病でも例外でなく、インシュリンペプチドとベータ細胞由来の他のペプチドがキメラになった分子に対するT細胞の反応が存在し、マウスモデルでは発症までの経過と強く相関することが知られている。

この研究ではMHC など1型糖尿病の遺伝リスクが高い6ヶ月から2歳の子供のコホート研究で集められた末梢血を用いて、これまで特定されているインシュリンのキメラペプチドに対する反応を追跡した研究で、インターフェロンとIL-10分泌を指標に、炎症促進型のT細胞反応か、炎症阻害型のT細胞反応かについて調べている。また、子供たちをインシュリンに対する抗体陽性と、抗体陰性群に分けて調べている。インシュリンキメラペプチドとして特定されている分子の中には、他の分子ととキメラだけでなく、インシュリンの前駆体やインシュリン自身がキメラを形成している分子があり、ここではインシュリン内キメラと呼んでおく。

結論は以下の様にまとめられる。

  • インシュリン自己抗体の有無にかかわらず、1型糖尿病遺伝リスクの高い子供たちには、インシュリン内キメラペプチドおよびキメラペプチドに対するT細胞反応が検出できる。
  • インシュリン内ペプチドに対してはIL-10分泌反応が優勢の傾向がある。また、自己抗体陽性の子供では、インターフェロン優位の反応が起きやすくなっている。
  • 発症までの過程では、多くの自己免疫病でみられる様に、T細胞の反応が揺れる。特に、インターフェロンとIL10の比で想定される炎症の変化は大きく触れる。一方、ワクチンに対する反応はインターフェロン優勢の炎症型で固定している。
  • キメラペプチドに対するT細胞反応は、炎症型への変化と、病気の発症、病態に明確に関与する。

結果は以上で、臨床データなので明快とはいかないが、1型糖尿病の発症が抑制性T細胞と、炎症型T細胞のバランスの上に存在し、それが炎症型へと傾いて、最終的に自己抗体産生、そして発症につながることがわかる。この反応をそのまま検査に使って早期診断まではいかないだろうが、以前紹介したRNAワクチンも含めて(https://aasj.jp/news/watch/14693)、早期に発見できれば今後発症を止めることができる可能性は高いと思う。

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