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2月19日 100万年以上前のマンモスゲノムを解読する(2月17日 Natureオンライン掲載論文)

2021年2月19日

マンモスというと、大きな牙と長い毛を持つ毛長マンモスのイメージが定着しているが、実際にはアフリカで最初発生し、その後いくつかの種に分かれ、寒い環境に適応して毛長マンモスになったと考えられている。さらにアメリカで発見されたコロンビアマンモスは、ユーラシアから移動した毛長マンモスの子孫が、より暖かい環境に再適応して短い毛になったと考えられている。

もちろんマンモスはホモサピエンスともオーバーラップして存在しており、これらマンモスのゲノム研究も進んでいるが、コロンビアマンモスのゲノムの解釈には、さらに古い時代のマンモスゲノムの解読が必要だった。

今日紹介するスウェーデン自然博物館研究所からの論文は、なんとこれまで解読されたゲノムの中では最古、100万年以上前のマンモスゲノムを解読し、コロンビアマンモスの系統を明確にした研究で2月17日号のNatureに掲載された。タイトルは「Million-year-old DNA sheds light on the genomic history of mammoths(100万年前のDNAがマンモスのゲノムの歴史を明らかにした)」、で堂々と世界記録をうたっている。

これまで解読された最も古いゲノムは50万年前後で、だいたいこれが限界かと考えられてきた。方法を読む限り特に大きな方法の変化があったわけではないが、35b以上の断片のみいくつかの改良を合わせて、シベリアから出土した、地質年代で100万年前後のマンモス化石の歯からDNAを調整、ミトコンドリアに関しては完全に、核内DNAに関しては、5千万、9億、36億塩基対の解読に成功している。

シベリアの低温で化学的変化が抑えられていたとはいえ、100万年前のゲノムを解読したというのがこの研究のハイライトで、実際得られたミトコンドリアDNAの配列から計算される年代は、それぞれ165万年、134万年、87万年、核内ゲノムの解読が高いレベルで行えた2匹については、核内ゲノムでの年代測定も行い、128万年、82万年といずれも記録レベルであることを示している。

さらに重要なのは、今回解読された2種類は、これまで特定されていた系統群からかなり離れ、一種は毛長マンモスとは250万年前後に分離していることがわかる。

このように新しい系統群が見つかったことでわかった最も重要な発見は、これまで系統関係がはっきりしなかったコロンビアマンモスが、今回発見された新しい系統群と、毛長マンモス系統群が一度交雑してできた雑種由来であることがわかったことだ。実際それぞれのゲノムがほぼ半々で混ざっている。

さらに、今回発見された系統群では、低温適応に必要な毛長マンモスが進化させたTRPV3遺伝子の4種類のアミノ酸置換のうち、2種類しか有していない点で、おそらくシベリア出土とはいえ、低温適応途上の系統群であったと推察できる。

結果は以上で、マンモス分類学にとって重要な発見というだけでなく、より古いDNAの解析が可能かもしれないことを示した意味は大きい。ミトコンドリアについては解読が行われ出した直立原人までゲノム研究が広がれば、アフリカでの人類誕生の謎に光が当たること間違い無い。期待したい。

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