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2月22日 肺がんのネオアジュバントチェックポイント治療(2月号 Nature Medicine 他)

2021年2月22日
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チェックポイント治療はメラノーマや肺ガンのように遺伝子変異が多いガンから認可され、徐々に適応が広がってきた。同じように、ネオアジュバント治療も、メラノーマで始まり、大規模治験は肺ガンへと拡大されてきている。そこで今日は肺ガン、特に非小細胞性肺ガン (NSCLC)治療をまずチェックポイント治療から始める治験について、最近の論文から紹介したい。

まずネオアジュバント治療ではないが、化学療法とチェックポイント治療を比べた治験がスペインとトルコからThe Lancet OncologyとThe Lancetに発表されている。NSCLCの中でガンのドライバー遺伝子が特定できたものは標的薬で治療できるが、それ以外の予後はよくない。これらの論文では、ドライバー遺伝子が見つからなかったNSCLC患者さんを、PD-1+CTLA4を合わせたチェックポイント治療と、従来の化学療法とに振り分けて、それぞれ約三年近く観察し、いずれの論文もチェックポイント治療の方が生存期間が長いことを示している。この結果は、今後我が国でもステージの進んだ肺ガン治療は、チェックポイント治療から始めるようになることは間違いない。

ただ我が国で一般的に行われているように、薬剤としてはPD-1だけでいいのか、あるいはPD-1+CTLA4の併用でいくのかが問題になるが、副作用の問題を除くと、両者併用が優れていることを示唆するのが、チェックポイント治療をネオアジュバント治療に用いたテキサス大学からの論文だ。タイトルは「Neoadjuvant nivolumab or nivolumab plus ipilimumab in operable non-small cell lung cancer: the phase 2 randomized NEOSTAR trial (手術可能な非症細胞性肺ガンのネオアジュバント治療としてのnivolumab単独、あるいはnivolmab+ipilimumabの比較:第2相NEOSTART無作為化治験)。

タイトルにあるように、この研究はStageIからIIIまでのともかく手術可能な症例を集め、手術前にPD-1抗体単独、あるいはPD-1+CTLA4抗体併用を2週間に1回投与、3回投与した後手術を行うというスケジュールで治験を行っている。普通の治療より間隔も短いからかもしれないが、自己免疫性の副作用は避けられず、ネオアジュバント治療中1人は肺の炎症により入院している。最終的に、単独23例、併用21例が治験を終えている。

この研究でstageを広く取っているのは、手術サンプルを調べて、効果を病理的に調べることが主目的になっているからで、生存率で評価した場合、手術可能症例ということもあり、30ヶ月時点では大きな違いはない。

しかし、切除標本の病理所見は、両者で大きく異なり、ガンの縮小率、そして局所へのT細胞の浸潤という点では、PD-1+CTLA4併用療法が明らかに優れていることを示している。 T細胞受容体についても調べており、治療により腫瘍内のT細胞受容体の多様性が上昇すると同時に、クローン性増殖も認められるが、この指標でもやはり併用療法の方が効果が高いことを示している。

以上の結果は、昨日のメラノーマと同じで、ネオアジュバント治療には、副作用は上昇するが、PD-1とCTLA4に対する抗体を併用するのが最も効果的だという結論になる。メラノーマでは、ネオアジュバントで効果があったかどうかが、手術とは無関係に予後を作用することになったが、肺ガンでは、ネオアジュバントの効果が、手術後の成績にも反映されるのか、もう少し待つ必要があるだろう。

このように、ガンになったらまず免疫療法という方向性が定着するような予感がする。

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