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4月29日 リモート会議の功罪(4月27日 Nature オンライン掲載論文)

2022年4月29日
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文明の進歩の結果、もはや起こることはないだろうと思っていたことが、新型コロナパンデミック、そしてロシアのウクライナ侵略と続けて起こってしまった。しかし、同じことが起こらないように努力するのも人間で、パンデミックだけでなく、武力大国の侵略についても、抑止のための新しい仕組みを求めた取り組みが、既に平行して進んでいると思う。

3日前に紹介したように、治療薬についても、変異や新種にかかわらず効果を持つ治療薬の開発が進んでいるし(https://aasj.jp/news/watch/19550)、ワクチンもユニバーサルワクチンについての論文の数が増えてきた。もちろん、これらの医学成果を迅速に行政に反映できるシステム転換も必要になるが、少なくとも我が国では心許ない。

そんな中、ポストコロナへ備える論文と言えるのだが、リモートワークの功罪について科学的に調べようとした行動心理学の研究が、コロンビア大学から4月27日 Nature にオンライン発表された。タイトルは「Virtual communication curbs creative idea generation(バーチャルなコミュニケーションは創造的アイデアの生成を抑える)」だ。

タイトルを見るだけで、多くの企業の経営陣は驚いてしまうと思う。バーチャルコミュニケーションというのは、まさにリモートワークでの会議を指しており、コロナ禍で積極的に導入された結果、米国の就業者の75%が少なくとも週1日はリモートで済ませたいと思っているようだ。

私も、顧問先との会議はほとんどがリモートになっているし、患者さんや研究仲間との公開勉強会も、リモートのおかげで気軽に出来るようになって、開催数が間違いなく増えた(今日も脊髄損傷のジャーナルクラブを予定している:https://aasj.jp/news/seminar/19556)。一方で、授業や講演については、リスポンスがわかりにくく、またじっと画面を見てしまうので、疲れることも事実だ。

この研究では、リモート会議で生まれる成果に絞ってその功罪を調べている。わざわざ会議をする目的は、報告を聞くだけと言うこともあるが、問題解決が最も重要な目的だ。そして、解決のためのアイデア出しと、いくつかの可能性の中からの正しい選択が、会議の課題になる。

この研究では、一人の相手と向き合っての会議、そして多くの人が参加する会議の状況で、特定の課題に対していくつのアイデアが出たのか、またそのアイデアは創造的かを調べ、バーチャルで会議を行うと、アイデアの総数や創造的なアイデアの数が減ることを示している。

一方、いくつかの可能性から正しい選択をするセッティングでは、バーチャルで会議を行った方が正しい決断が出来ることを示している。

このような行動心理学の課題は、用いられた評価方法が正しいかどうかで、何が創造的なのか問題はありそうだが、ここでは結論を鵜呑みにしておくことにする。

では、何故このような結果が生じるかだが、視野や視線を追う実験を行い、PC画面に視野が限定されることが、創造性を損なう原因になると結論している。言い換えると、少々気が散る環境で、周りを見渡しながらアイデアを考えるほうが創造的になり得るという結果だ。ただ、だからといって大きなモニターに変えたらいいかというとそうではないことも確かめる念の入れようだ。

このように、注意深く他の可能性についても議論しているが、全て省く。そして、リモートには功罪があり、それをうまく組みあわせることで、もっと効率の良い会議が可能になると結論している。

Natureの編集方針がポストコロナに移行したことを示す面白い論文だ。ただ、創造性が高いアイデアの数の違いといっても、6.7に対して7.9なので、有意差といっても、参考にする程度でいいのではないだろうか。リモート会議は明日から中止といった短絡思考が出ないことを祈る。

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