4月3日 シヌクレインの凝集と伝搬を阻害する化合物でパーキンソン病を治療する可能性(4月1日 Science Translational Medicine 掲載論文)
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4月3日 シヌクレインの凝集と伝搬を阻害する化合物でパーキンソン病を治療する可能性(4月1日 Science Translational Medicine 掲載論文)

2026年4月3日
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アルツハイマー病のAβやTauの凝集を抑えたり溶解したりする薬剤の開発は何回かこのブログで紹介しているが、これまでのブログを調べ直してみても、パーキンソン病 (PD) の原因になるαシヌクレインに直接結合してシヌクレイン症を抑えるといった研究論文は紹介していない。

ところが今日紹介するデンバー大学からの論文は、キノリンが数個結合したオリゴマーが、秩序だった状態で折りたたまれていることで、タンパク質のαフェリックスやβシート構造に結合できるフォルダマーと呼ばれる分子の一つSK-129がαシヌクレインの凝集、伝搬、そしてTauとの凝集を阻害する活性を持ち、動物モデルでPDを治療できることを示した研究で、4月1日 Science Translational Medicine に掲載された。タイトルは「Foldamers rescue synucleinopathy phenotypes in multiple in vitro and in vivo models(フォルダマーが様々な in vitro と in vivo のモデルでシヌクレイン症を正常化できる)」だ。

調べてみると、この研究で使われたSK-129と名付けられたフォルダマーは、2022年に開発論文が発表されている。最初の論文では、細胞レベルのPDモデルを用いて、αシヌクレインの細胞内での凝集を阻害できることを示している。それからほぼ4年が経過しているが、SK-129一筋に研究が続けられており、この研究ではタイトルにもあるように実に様々なモデルを用いて、その効果が調べらている。

前半は凝集が起こる変異を持つヒト シヌクレインを神経細胞で発現させた線虫で研究が行われている。このモデルの存在は知っていたが、紹介するのは初めてだ。シヌクレインを蛍光標識しておくと、透明な線虫ではシヌクレインの凝集から細胞死まで完全に追跡できる。すなわち、孵化後2日目にSK-129を投与すると、3日目から起こリ始める蛍光シヌクレインの凝集を強く抑制し、さらに3日目から15日までコンスタントに減り続ける神経細胞をほぼ完全に保持することができる。結果、線虫の運動低下を抑える。面白いのはPDモデルの線虫でもドーパミンが運動回復に効果がある。この系にSK-129を投与しておくと、正常線虫と同じでドーパミンは効果がなく、内在的なドーパミンが十分維持されている。

さらに、凝集が始まったあと、孵化後5日目にSK-129を投与しても効果があり、シヌクレイン凝集による活性酸素の生成を抑え、神経細胞死を抑えていると考えられる。従って、人間の様に診断がついた後でも治療に使える可能性がある。さらに、エクソゾームを介する異常シヌクレインの伝搬も、おそらく凝集シヌクレインはオリゴマーに結合することで、抑えることができる可能性が示唆された。

結局はマウスモデル、そしてヒトへと実験を進める必要があるので、わざわざ線虫でここまで丁寧に実験を行う必要はないのではと思ってしまうが、PDモデルとしてはそんなに悪くないというのも実感した。

後は、PD患者さんのiPS由来神経細胞を用いて神経細胞異常を誘導し、それを治療する実験を行い、ドーパミンSK-129で回復することを示している。他にも試験管内で実に様々な実験を行っているが割愛する。

最も重要なのはマウスPDモデルを用いた治療実験で、8週目にシードと呼ばれるヒトPDシヌクレインを脳内に注射、その後10週間目からSK-129を投与している。期待通りの結果で、SK129を投与しておくとPDガ発症しない。病理学的に調べると、シヌクレインの神経内凝集が見事に抑えられている。すなわち、SK-129は脳内に速やかに移行して、神経内でのシヌクレインの凝集、伝搬、そしてオリゴマーによる細胞死を抑える理想的な薬剤である事がわかる。

最後に、最近シヌクレイン症の病型を決めるのに重要とされているTau分子と共沈殿についても調べ、SK-129は相分離体の形成を変化させることで、共沈殿の形成を抑えることまで示している。

以上が結果で、明日からでも治験をしてほしいと思える大成果に見える。ただ、まだまだぬか喜びで終わる可能性もある。しかし、マウスの実験でここまでの結果が出るとすると、SK-129がダメでも他のフォルダマーを開発できる可能性はある。期待したい。

カテゴリ:論文ウォッチ
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