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5月13日 ワクチン開発に協調が必要なわけ(Nature Medicine オンライン掲載論文)

2020年5月13日

新型コロナのインパクトから解放される切り札として、ワクチン開発に世界中の企業や研究機関がしのぎを削っている。しかし今回ばかりは、競争だけでなく、世界的な協調が必要だと思う。もちろん一度の注射で間違いなく免疫ができるプロトコルができれば万々歳だが、多くの免疫学者は懐疑的だろう。では冷ややかに、「ワクチンに過度の期待を寄せない様に」などと他人事では済ませられないのが今回のコロナだ。この場合、一つのタイプワクチンより、いくつかのワクチンを組み合わせたほうがいい場合がいくらでも考えられる。そのためには、調べる項目を共通化し、データを開示して、必要なら異なる形態のワクチンを組み合わせて、次の流行に備えることが重要になる。

今日紹介するスタンフォード大学、エモリー大学、ミネソタ大学が共同で発表した論文はそんな協調の例ではないかと思う。タイトルは「T cell-inducing vaccine durably prevents mucosal SHIV infection even with lower neutralizing antibody titers (T細胞誘導性のワクチンは抗体価が低い場合もSHIVの粘膜感染を防ぐ)」だ。

インフルエンザにしても、デングにしても、麻疹や黄熱病の様に一度で一生免疫ができるワクチンは完成していない。これは、免疫した抗原に対する記憶が維持できていないからだ。今、コロナでも、感染者で抗体が低下することが問題にされているが、いつまでも抗体が維持されるほうが問題で、いつかは低下する。しかし、抗原に反応できる記憶細胞が体に潜んで、次の反応で迅速に活性化できることが重要になる。

この研究はワクチン開発が全く成功していないエイズのモデルとして、猿のエイズウイルスに対するワクチン開発を目指している。おそらく、この研究に集まった各グループは、異なる様式のワクチンを独自に研究していたのだと思う。ただ、単独では最終的に長期効果のあるワクチンが得られなかったのだろう。そこで、ウイルスのエンベロップが3量体になったタンパク質と強力なアジュバントで抗体を誘導することがわかっているワクチン(以後SOSIPと呼ぶ:この様式も極めてハイテクでナノ粒子まで用いている)に、同じgag遺伝子を組み込んだ3種類の異なるベクター(3種類混合と呼ぶ:VSVウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、そしてアデノウイルスベクター)を全て合わせることで高い免疫誘導が可能か調べている。まさに、協調の賜物と言える論文だ。

さらに驚くのはワクチン投与法で、一年以上にわたって4回投与を行い、その間に3回、3種類混合ワクチンを静脈注射している。

多数の猿を用いて、詳しくデータが取られており、データの詳細は全て割愛する。結果だが、中和抗体誘導という面では、SOSIPで十分で、319倍以上の抗体価があれば、膣からの感染を防ぐことができる。しかし、抗体価が319倍より低下すると、SOSIPワクチンだけでは不十分で、三種混合を静脈注射したグループのほうが感染を防げる。

最後に抗体価が低下した一年半後の抵抗性を調べているが、SOSIPと三種混合を併用したケースは高い感染抑制効果があった。ただこれだけしても長期効果実験では、7割しか感染防御が達成できていないことも指摘しておきたい。

結果は以上だが、いくつかのワクチンを、しかも繰り返し免疫することで、これまで難しかったエイズに対するワクチンもできるかもしれないという結果で、協調の重要性を示している。

ワクチンの場合、達成したいゴールは長期間維持できる記憶細胞とはっきりしている。新型コロナの場合、すぐに来る第二波に対しては、ともかく高い中和抗体を誘導するワクチンで対応するしかないだろう。しかし、その間にも長期間続く記憶細胞を誘導する組み合わせやプロトコルを追求することは重要だ。その意味でも、動物実験はできれば同じプラットフォームで行い、ボランティアでの免疫実験で調べる項目を共通化しておくことで、ぜひ将来の協調を見据えた開発を望む。

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