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5月26日 ケトンダイエットと腸内細菌(5月28日号 Cell 掲載論文)

2020年5月26日

これまでなんどもケトンダイエットの不思議な効果を示す論文を紹介してきた。例えば小児の難治性てんかん発作が4割の子供で軽減できるという報告などを見ると(https://aasj.jp/news/lifescience-easily/11255)、そのメカニズムを突き詰めてより簡便な治療法へと発展してほしいと思う。

今日紹介するカリフォルニア大学サンフランシスコ校からの論文はケトン食の効果の一つ原因が、腸上皮細胞のケトン体分泌、ケトン体による細菌叢の変化、細菌叢による免疫系の変化という複雑な回路を介していることを示した研究で5月28日号Cellに掲載された。タイトルは「Ketogenic Diets Alter the Gut Microbiome Resulting in Decreased Intestinal Th17 Cells (ケトン食は腸内細菌叢を変化させ、腸管のTh17細胞を低下させる)」だ。

ケトン食が腸内細菌叢の変化を誘導する可能性は誰でも考えつくと思うが、あまり研究がされていなかったようで、腸内細菌叢の研究としてはあまり質が高いと思えないのだが、Cellに掲載されていることにまず驚いた。

比較的単純な研究で、炭水化物が5%というケトン食を1ヶ月続けて、便の細菌叢を調べると、ほとんど完全に消失する放線菌など、細菌叢に大きな変化が起こること、そして細菌種の詳しい検討から、様々なビフィズス菌がケトン食で増殖を抑えられるという観察をきっかけに、あとは動物に人の便を移植する実験系を使って、細菌叢の変化の意味を調べている。

結論は単純で、ケトン食はまずホストの代謝バランスを変化させ、ケトン体の生産を高める。おそらく同じことは腸管上皮でも起こっており、上皮から分泌されるケトン体が細菌叢に働いて、ビフィズス菌などの増殖を抑える。このビフィズス菌量の低下が、腸管や脂肪組織への炎症性Th17細胞をの蓄積を抑えることを、実験的に示している。

なるほどケトン食も細菌叢への効果があるのかと納得した以外は、Cellの論文としては雑で物足りないという印象が強かったが、それでもケトン体を投与することで細菌叢のバランスを変化させられるプレバイオの可能性、およびケトン体により善玉と思っているビフィズス菌や乳酸菌が減るいっぽう、発ガンにつながるEccoliやFusobacteriumなどが増殖することは気になった。

特に後者は、ケトン食を続けていると知らず知らずのうちに発ガンのリスクは高める可能性を示唆しており、ケトン食の効果が素晴らしいからこそ、この点はさらに詳しい検討をしてほしいと思った。

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