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5月7日 Fragile X の神経症状改善薬の第2相臨床治験 (4月29日 Nature Medicine オンライン掲載論文)

2021年5月7日
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Fragile X症候群(FXS)については、これまで何度も紹介してきた。病気はX染色体上にあるFMR1遺伝子の機能喪失が原因だが、単純な変異ではなく、遺伝子内に存在するCGGコドンの数が増幅され、このリピートがメチル化されてしまうことで遺伝子発現量が低下する。従って、以前紹介したようにFMR1遺伝子のメチル化をクリスパー/TETなどを用いて除去することが最も根本的な治療になる(https://aasj.jp/news/watch/8091)。

ただ、これが実現されるまでにはまだまだ時間がかかる。そこで、FMR遺伝子の機能を調べ、この機能を補完する治療が必要になる。問題は、FMR1遺伝子の機能がよくわかっていないというか、多様で捉え所がない。ポリゾームに結合するRNA結合タンパク質であることはわかっているが、転写からシナプス形成まで、多くの過程に関与している。もっとも最近紹介した論文では、FMR1機能低下でミトコンドリア膜の漏れが起こるため、これを抑えるdexpramipexole投与でマウスFXSモデルの神経症状が改善することが示されている(https://aasj.jp/news/watch/13806)。同じように、FMR1遺伝子機能不全による代謝異常を正常化させる研究も多くおこわれており、例えばスタチンの治験が進行中だし、メトフォルミンについてはすでに多くの患者さんに投与されていると思う。しかしながら、臨床治験で症状改善が確かめられ、認可を受けた薬剤はまだない。

そんな中で、今日紹介するRush大学からの論文は成人のFXSに、phosphodiesterase-4Dの阻害剤を投与して細胞内のcAMPレベルを上げることで、知能や言語機能が回復することを示す、FXSにとっては画期的な治験研究で4月29日のNature Medicineに掲載された。タイトルは「Inhibition of phosphodiesterase-4D in adults with fragile X syndrome: a randomized, placebo-controlled, phase 2 clinical trial(phosphodiesterase-4Dの阻害剤の成人Fragile X患者さんへの効果を調べる第2相無作為化偽薬対照治験)」だ。

なぜphosphodiesterase-4D阻害剤かというと、FXSの患者さんやモデル動物ででは、細胞内のcAMPレベルの低下が観察されており、神経では特にグルタミン酸受容体を介する学習や記憶回路の反応性が低下していると考えられていた。そこで、cAMPを分解するphosphodiesterase-4Dを阻害してみたらどうかと、phosphodiesterase 阻害剤BPN14770の前臨床実験が行われ、マウスモデルで著効を示した。

ただ、治療自体は神経細胞特異的ではないので、安全性の心配などがあるが、第1相治験でこの問題をクリアした上で、小規模ではあるが、完全に無作為化偽薬対照第2相治験へと進んだのが今回の論文だ。

三十人の成人FXS男性を選んで、無作為化偽薬対照治験でBPN1477025mgを1日2回6週間投与している。この治験はクロスオーバー治験とよばれるもので、12週間後BPN14770群と偽薬群をひっくり返し、その後12週間経過を見ている。

まず6週目で様々な認知テストを比べると、すでに形成された記憶の認識を始め、特に言語能力が高まっていることが明らかになった。他にも、不安神経症や社会性の改善も見られる。

クロスオーバーでBPN14770と偽薬をひっくり返したとき、それまで偽薬のために改善がなかった群も、認知機能が改善するので、この薬剤の効果がさらに確かめられている。もっと素晴らしいのは、偽薬にスイッチしてからも効果がそのあと12週間低下することなく続くことも発見している。すなわち、薬剤なしでも比較的長く続く神経学的変化が起こっていることを意味している。

これを確かめるため、脳波によるイベントに対する反応性、およびアイトラッカーによる社会性のテストも行い、行動が正常化する背景に、確かに神経細胞レベルの反応性の変化があることを示している。

結果は以上で、次に大規模試験が行われるのだろう。この研究ではFXS治療としてBPN14770が使われたが、他のグルタミン酸受容体を介する神経反応性異常にも適用を拡大する可能性もある。その意味で、結構期待できるのではと感じている。

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