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12月10日 一般胃腸薬が新型コロナ感染予防に役に立つ?(12月7日 Nature オンライン掲載論文)

2022年12月10日
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久しぶりに Covid-19 の論文を紹介する。ケンブリッジ大学からの論文で、なんと普通に胃もたれを予防する市販薬として売られ、そのメカニズムも明らかな薬剤が、Covid-19 の予防に効果があるかも知れないという研究で、12月8日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「FXR inhibition may protect from SARS-CoV-2 infection by reducing ACE2(FXR阻害はACE2発現を減少させて SARS-CoV-2 感染から守るかも知れない)」だ。

おそらく胆管上皮の遺伝子発現を調べる目的だったと想像するが、胆管上皮オルガノイド培養で ACE2 の発現が胆汁酸により調節されていることを発見する。

胆汁酸は核内受容体FXR を介して作用することがわかっているので、ACE2遺伝子上流に FXR結合部位があるか染色体免疫沈降で確認した後、次に胆管上皮の ACE2発現を、市販薬としても使われている UDCA で抑制できることを明らかにする。

次に FXR による ACE2発現調節が他の上皮でも同じように行われるのか調べるため、気管上皮や消化管上皮のオルガノイドで調べると、UDCAで同じように抑制できる。

そこでオルガノイドを用いて、SARS-Co-V2 感染実験を行うと、上皮内の SARS-Co-V2 の増殖を抑えられることがわかる。また、ハムスターを用いた感染実験系でも、UDCA をあらかじめ投与したハムスターでは感染を強く抑えることを確認している。

後は人間でも同じことが言えるかで、移植出来なかった肺を用いた感染実験で、UDCA を血液に注入することで感染を抑えられることを確認した後、実際の臨床状態を、肝臓病で UDCA を投与された人と、投与されなかった人の入院や重症化の比率を調べると、入院比率は30%、ICU治療が必要になる確率は10%減ることを示している。

さらにこの結果を確認するため、肝移植を受け、2回ワクチンを受けた後感染した人の入院率や重症化率を UDCA投与有り無しで比べると、入院率が20%低下、重症化率が15%低下していることが明らかになった。

以上が結果で、驚くほどの効果ではないかも知れないが、我が国でも市販薬として手に入る UDCA に感染予防効果がある程度あることがわかった。UDCA は脂肪をとったときの胆汁による胃もたれや、場合によっては脂肪を抑えるサプリとして利用されていることを考えると、おそらくほとんど副作用はないのだろう。人混みに行く2-3日前から服用して予防する方法に使える可能性はある。また、構造から考えても、喘息のステロイド吸入のような方法で気道に投与することも可能だろう。少しでもウイルスの流通量を減らすという意味で面白い論文だと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
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