現役時代、 米国のCold Spring Harbor Laboratoryがアジアへ拡大すると言うことでCold Spring Harbor Laboratory Asia を立ち上げる際のアドバイザーを、東大の谷口先生とともに務めました。蘇州CSHで開催される会議に出席されことのある我が国の研究者も多いと思いますが、中国ではこの活動が火付け役となって、蘇州には数多くのバイオベンチャーが集積したと聞いています。
そのCSH Asiaの活動も新型コロナパンデミックで大きく障害されたと思います。また、今後世界情勢が複雑化することを考えると、CSH Asia Meeting を蘇州だけで開催するのではなく、日本などに分散することが重要だと認識されるようになってきました。
2つ(bispecific)、あるいは3つ(trispecific)の特異性を持つ抗体を組みあわせたキメラ抗体を使って、CAR-Tの代わりにする治療法についてはこのブログでも紹介してきた(Bispecific 抗体=https://aasj.jp/news/watch/10395 、Trispecific抗体=https://aasj.jp/news/watch/19166。ただ、これまで紹介したのは全て動物を用いた前臨床試験だったが、今日紹介するマウントサイナイ医科大学を中心とする国際チームからの論文は、ヤンセンファーマが開発した骨髄腫に対する抗体(GPRC5D)にT細胞をガンに惹きつけるCD3抗体を合体させた bispecific 抗体を患者さんに使った治験研究で、12月10日 The New England Journal of Medicine にオンライン掲載された。タイトルは「Talquetamab, a T-Cell–Redirecting GPRC5D Bispecific Antibody for Multiple Myeloma(T細胞を新たな標的に向けるGPRC5D bispecific抗体、Talquetmabによる多発性骨髄腫治療)」だ。