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12月22日 脳弓深部刺激のアルツハイマー病への効果を検証する(12月14日 Nature Communications オンライン掲載論文)

2022年12月22日
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今年の4月、アミロイドβとTauの蓄積を元にアルツハイマー病( AD ) の進展様式を調べた研究を紹介した(https://aasj.jp/news/watch/19541)。この結果が示すのは、アルツハイマー病も嗅内野からつながる神経回路に沿って進展する回路病であることを示唆している。とすると、刺激によりこの神経回路を増強することで AD 進行を遅らせられるのではと着想し、動物実験を経て臨床治験が行われている。

異なる刺激場所についての治験が進んでいるが、今日紹介するハーバード大学からの論文は、脳弓を刺激して、海馬から乳糖体まで大脳の辺縁系を取り囲んで存在するパペッツ回路を増強する治験についてのMRIを用いた検証研究で、12月14日 Nature Communications にオンライン掲載された。タイトルは「Optimal deep brain stimulation sites and networks for stimulation of the fornix in Alzheimer’s disease(脳弓刺激によるアルツハイマー病の深部刺激治療のための刺激部位とネットワーク)」だ。

この治験は、認知機能の改善・悪化が混在し、効果なしと判定されている。しかし、明らかに改善したと思われる患者さんが存在すること、高齢者の方に改善する人が多かったことなどから、完全に効果なしと判定するのは忍びないと考えたようだ。そこで、改善した患者さんと、悪化した患者さんの間の脳回路や機能に差があるか、1)MRI で検出できる記憶回路の構造、2)刺激場所と臨床症状の相関、3)fMRI による機能的ネットワーク、の3点について調べている。

結果は明瞭で、改善の著しい患者さんでは、刺激場所の脳弓から分界床核への脳弓回路がしっかりと特定できる。またこの神経投射と症状改善は比例する。

同じことは安静時 fMRI で測定できる領域間の同調性から推測される回路(この場合は以前紹介した default mode network になる:https://aasj.jp/news/watch/19488)でも同じで、症状の改善の高い人は、default mode network の結合性が高まる。

以上のことから、うまく当たれば深部刺激はADの症状改善に寄与することが強く示唆される。しかし、刺激場所と症状改善との相関を調べると、改善につながる sweet spot は患者さんの間で変化が大きく、現段階で手術時に sweet spot を決めることは難しいので、どうしても出たとこ勝負になることがわかった。

結果は以上で、今後他の領域を刺激した治験を待つことになるが、sweet spot さえ見つけることが可能になれば、間違いなくAD の症状を抑えることが出来ることがわかった。

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