ダーウィンがダーウィンフィンチの図を前に一般の人に講義をしているイラストを描いてほしいとGPT4にインプットするとできてきたイラストをまず掲載する。
大変よくできているのだが、ダーウィンフィンチの進化についてはかなりいい加減だと思う。すなわち、変化はほとんど毛色で表現されており、顔や嘴はほとんど同じだ。図作成のためにインプットしたプロンプトが悪いのだと思うが、実際のダーウィンフィンチの種分化の研究は嘴の形を中心に行われている。
今日紹介するマサチューセッツ大学からの論文は、ガラパゴス島のフィンチの嘴の形状が種分化に必須の交配率にどう関わるかを調べた面白い研究で、10月11日 Science に掲載された。タイトルは「Ecological speciation in Darwin’s finches: Ghosts of finches future(ダーウィンフィンチの生態学的種分化:未来のフィンチの幽霊を使う)」だ。
未来のフィンチの幽霊というタイトルが面白い。なぜこんなタイトルがついたのか。この研究が目指している生態学的種分化をわかりやすく説明すると、地理的に分離された同じ動物が、その環境に合わせて進化するとともに、他のタイプの個体との交雑がなくなるため、交雑の起こらない異なる種として分離することを示している。ダーウィンは、嘴の形が環境の食べ物により決まっていることを観察して、自然選択の説明に用いた。
ただ、フィンチは飛べるので、ガラパゴス諸島のような距離間では、完全に交雑を防ぐのは難しい。また、ニッチを探して同じ島でも種分化は起こる。これを説明するために、嘴の形や大きさが変わると、鳥の交配に必要な鳴き声が変わるのではと考えられ、研究が続けられてきた。
この研究では、嘴の変化によって起こる鳴き声の変化を人工的に作り出して、それに対する野生のフィンチの反応を調べる実験で、嘴の形状変化が食性だけでなく、メーティングの行動変化を誘導して種分化を促進することを調べており、これが「未来のフィンチの幽霊の声」になる。
この鳴き声作りで参考にしたのが、干ばつを1回経験すると、堅い実を食べるためにフィンチの嘴が大きくなることで、1回から6回まで干ばつを経験すると、嘴の深さが6mm大きくなる。このような嘴による鳴き声を採取して、人工的に干ばつ経験1、3、6回の鳴き声を作って、それを野外で聞かせ、フィンチの行動を調べている。
要するに人工的に作成した鳴き声を自分の仲間と認識するかだが、3回ぐらい干ばつを経験したあとででも、ちゃんと自分の種として認識するが、6回となるとかなり反応が鈍くなる。すなわち、嘴の大きさは、ある一定のレベルを超えると食性だけでなく、メーティング行動を変化させられる。
もちろん、他の個体との関係により、鳴き声の好みが変化することが知られており、その影響を調べると、この社会的な認識の効果は大きい。しかしそれでも嘴の大きさは十分影響力があり、種分化の力になり得る。
以上が結果で、未来のフィンチを想像して声を作成したというのがハイライトだが、実際の観察実験は大変だと想像する。