10月30日 GLP-1 受容体刺激剤使用対象の止めどない拡大(10月22日 Nature Medicine オンライン掲載論文他)
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10月30日 GLP-1 受容体刺激剤使用対象の止めどない拡大(10月22日 Nature Medicine オンライン掲載論文他)

2024年10月30日
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2023年の医学の最大トピックスは、抗肥満薬としての GLP-1 受容体アゴニストの快進撃で、体重を低下させるだけでなく、インシュリン抵抗性まで改善が見られるという研究結果が相次いで発表された。その結果、GLP-1 受容体アゴニスト (GRA) が品薄になり、この薬剤の本来の治療対象だった2型糖尿病患者さんに薬剤が回らないという事態にまで至った。

ただ、この快進撃は今年も止まらず、糖尿病や肥満から、その適用がさらに拡大する有様になっているので、簡単にまとめておく。

まず読んでほしいのは、9月26日号の Nature に掲載されたレポートで、

、「どうして抗肥満薬はこれほどたくさんの病気に効果を示すのか」というセンセーショナルなタイトルがついている。

実際、2型糖尿病の罹患者の数は天文学的なので、GRA で治療したグループと、そうでないグループに分けて、一つの病気の罹患頻度を比べると、GRA の効果が推定できることが多く、それまで考えられたことのない病気への GRA の効果が報告されるようになった。

最近ケースウェスタン大学から発表された例は、アルツハイマー病にかかっていない糖尿病患者さんを追跡し、3年目にアルツハイマー病の診断がついた患者さんを、GAR 治療群とそれ以外で比べると、AD と診断される確率が50%程度の低下するという結果だ。

これを受けて糖尿病とは切り離して、治療治験が行われており、その結果も近々現れるだろう。

実際パーキンソン病については、糖尿病から切り離して偽薬を用いた無作為化治験が今年4月 The New England Journal o Medicine に発表された。

結果は、MDS-UPDRS という指標で調べると、12ヶ月目で運動機能のコントロールは3ポイント低下したのに、GRA 使用群は全く低下しなかった。これは第2相の試験なので、さらに大きな治験が行われていると思う。

さらに驚くのは麻薬やアルコールの中毒を抑えられる可能性で、米国 NIH の研究グループが JAMA Network Open に9月25日オンライン発表した論文では、米国で乱用され問題になっているオピオイド・オーバードーズに陥る患者さんが GRA 利用で強く抑えられるという結果が発表されている。

このように神経系だけでなく、今日最後に紹介するオランダ フロニンゲン大学を中心とする国際チームが10月22日 Nature Medicine に掲載した論文は、これまで糖尿病性腎症を対象に GRA の効果が示されてきた慢性腎症 (CKD) を、糖尿病の合併がない CKD 患者さんを対象に効果を確かめた治験だ。

この研究では、糖尿病に罹患していない HbA1c が平均5.7の CKD 患者さんを50人づつに分け、片方は GRA としてセマグルタイド、もう片方は偽薬を投与。約半年、24週間、eGRF や urine albumin-to-creatinine ratio (UACR) の変化を追跡している。

結論は明確で、eGFR は SGLT2 治療と同じで、セマグルタイド群でも初期の低下が見られるが、これは正常化する。SGLT2 の方は糸球体の生理から説明がついているが(Youtube 解説を参照してください:https://www.youtube.com/watch?v=Z6Tsb4AvU1Q&t=3s ) GRAでも同じようなパターンが得られるのは面白い。

24週という短い時間で明確な効果が見られたのが UACR で、投与群では24週で50%の低下が見られている。すなわち尿タンパク質量が低下している。この指標は通常糖尿病の合併のある患者さんの腎機能を知るために使われるが、今回の対象は全く糖尿病の既往がない。しかし、25%低下すると腎不全の確率が抑えられることが知られており、糖尿病とは関係なく50%低下を達成できたことは大きい。ただ、メカニズムは明確ではない。

以上、最近報告された論文をピックアップして紹介したが、Nature のレポートが報告しているように、ほとんどの病気が GRA の対象になる勢いだ。神経系に関しては、代謝改善、炎症抑制が合わさった効果と考えられるが、まだまだメカニズムはわからない。いずれにせよ快進撃がどこまで続くか期待したい。

カテゴリ:論文ウォッチ