10月17日 妊娠中のお母さんへのメッセージ論文2編(10月9日 Med オンライン掲載論文)
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10月17日 妊娠中のお母さんへのメッセージ論文2編(10月9日 Med オンライン掲載論文)

2024年10月17日
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最近、妊娠中の女性の行動と生まれてきた子供の病気について調べた疫学論文を2編、目にしたので紹介する。

最初はフィンランド東フィンランド大学からの論文で、妊娠中のエクササイズが生まれてきた子供の喘息を防ぐという研究で、10月9日 Med 紙にオンライン掲載された。

基本的には妊娠中のエクササイズ状況を自己申告してもらい、生まれてきた子供が5-7歳時点で喘息症状を示すかを調べている。

全く交絡因子を考慮せずに、エクササイズと喘息発症の相関を調べると、エクササイズをしているグループは驚くなかれ、オッズ比で0.5まで喘息の発症率が低下している。ただ、妊娠中も運動を欠かさないという生活スタイルは、それ自体母親の健康(例えば BMI など)と相関するので、生後の子供の環境も含めてそれらの影響を考慮して計算し直しているが、食生活も含めてほとんど影響がない。

また、毎週3回以上、汗をかく程度のエクササイズをしておれば、それ以上の強度のエクササイズ、あるいはもっと頻回にエクササイズするグループと明確な差はない。

以上が結果で、汗をかくぐらいの運動を週3回以上続ければ、子供が喘息にかかるオッズ比が0.53まで低下するなら、推奨するに値する。

もう一編の論文はオーストラリア ブリスベーン大学からの論文だが、実際はノルウェーで行われた調査で、妊娠中の女性のコーヒー摂取と、生まれた子供の脳神経異常の関係を調べた研究で、10月9日 Psychological Medicine にオンライン掲載された。

コーヒーにはカフェインなど脳神経に働く化合物が含まれているので、胎児の脳発達への影響はこれまでも懸念され、また社会性や言語発達への影響が指摘されてきた。ノルウェーはコーヒー消費国らしく、この問題への関心は深く、この研究が行われた。対象は5万人規模の妊娠女性で、コーヒー摂取については妊娠前、15週、22週自己申告で調べている。

この研究でも、妊娠中もコーヒーを飲んだ人と、飲まなかった人で比べると、18ヶ月から8歳まで調べた、社会性、言語発達、注意障害など様々な子供の神経症状との相関が見られる。

ただ、コーヒーを続けるということは、他の生活スタイルなどの交絡因子が存在する可能性があるので、それらを考慮して計算すると、ほとんどの相関はなくなってしまう。すなわち、タバコやアルコールなどコーヒーと関わる生活習慣(間接喫煙も含めて)の影響が大きい。それでも、8歳時点での社会性など、明確にコーヒー摂取との相関が残っている。

そこで、コーヒー摂取に関わる遺伝子多型を加えて調べる Mendelian Randomization を、対象者のゲノム検査に基づいて行っている。コーヒーの嗜好性は、カフェイン代謝、脳の報償回路など、様々な過程に関わる多型が特定されている。

結果は、個人レベルの多型をベースに Mendelian Randomization を行うと、それまで相関が認められていた社会性の異常もほとんどコーヒーは無関係になるという結果だ。

何か Mendelian Randomization へと誘導されている気分になる研究で、コーヒー好きのノルウェー人にとっては朗報かもしれないが、ある程度の相関はあるので、妊娠中はやめる残したことはないような気がする。

カテゴリ:論文ウォッチ
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