10月24日 ガンを樹状細胞にリプログラムして味方につける(10月18日 Science 掲載論文)
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10月24日 ガンを樹状細胞にリプログラムして味方につける(10月18日 Science 掲載論文)

2024年10月24日
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ガンに対する免疫を誘導するために、ホストの免疫機能を操作する治療法は、ワクチンやチェックポイント治療など急速に進んだ結果、臨床への導入が進み、ガンの根治は免疫システムの利用なしに成し得ないとまで考える人は多い。

今日紹介するスウェーデン・ルンド大学からの論文は、ホストのガン免疫増強に、ガン自体を樹状細胞へプログラムしなおしてガン抗原を提示できるようにして、ホストの味方につけようとするダイナミックな計画で、10月18日 Science に掲載された。タイトルは「In vivo dendritic cell reprogramming for cancer immunotherapy(生体内で樹状細胞へのリプログラミングをガン免疫のために誘導する)」だ。

このグループは、PU1、IRF8、 そして BATF3 をレンチウイルスベクターを用いて線維芽細胞に導入すると、樹状細胞へリプログラムされることを発見し、その後この3種類の転写因子をガン組織に導入することで、ガン免疫を誘導できることをすでに示していた。

この研究はその延長で、まず試験管内でガン細胞から樹状細胞へのリプログラミングを行い、それをマウスに移植する実験で、この3因子を導入したガンだけが、ホストの免疫を誘導し、ガンが除去されることをいくつかの腫瘍株を用いて示している。

次は、ガンを先に移植して、そこに3因子をレンチウイルスベクターで導入する実験を行い、遺伝子導入によりガンの一部が樹状細胞様に変化するだけでなく、キラーやヘルパーT細胞がガン組織に浸潤し、リンパ節様の組織まで形成され、その結果ガンが免疫により除去されることを示している。また、こうして誘導したガン免疫には、CD8細胞だけでなく、CD4T細胞も必要で、特にガン自体が樹状細胞様になることで、クラスII MHCとガン抗原によるガン抗原特異的CD4T細胞の増殖が起こることを示している。そして、この方法は、強い免疫記憶も誘導できることを示している。

以上のマウスを用いた実験を臨床へ進めるため、ヒトのガンで3因子をガンのオルガノイド培養で導入する実験を行い、マウスと同じように樹状細胞へのリプログラミングが可能で、その結果強いガン免疫を誘導できることを示している。

ただ、レンチウイルスベクターはゲノム内に組み込まれるため、ガンをさらに悪性化する可能性があるので、ゲノムに組み込まれないアデノ随伴ウイルスベクターを用いる方法を検討して、ガンのオルガノイド培養でヒトガン細胞の樹状細胞へのリプログラミングを誘導できることを示している。

その上でもう一度マウスモデルに移って、ガンを移植した局所にアデノ随伴ウイルスを注射するとともに、PD-1 や CTLA-4 に対する抗体を用いるチェックポイント治療と組み合わせることで、半数のマウスでガンの除去が可能になり、また除去できた個体では、免疫記憶が長期に維持されることを明らかにしている。

ガン自体がガン抗原のオリジンであることを考えると、ガン自体を樹状細胞へと変えてしまうことはダイナミックな、納得のグッドアイデアだ。リプログラミングによりガンの増殖も低下するようだが、これが目的ではないので、一部のガン細胞がリプログラムできれば、免疫誘導には十分だと思う。また、リプログラミングしにくいガン細胞が存在するという問題も、メカニズムが明らかになると克服できる可能性がある。そう考えると、意外とガン免疫誘導操作の切り札になる可能性は十分あると期待する。

カテゴリ:論文ウォッチ