1型糖尿病(IDDM)は自己免疫病なので、他の自己免疫病と同じでウイルス感染が最初の引き金になる可能性についてはこれまでも議論されてきた。今日紹介するオーストラリア・ウォルター・エリザホール研究所からの論文は、小児の腸炎の最も多い原因であるロタウイルスがIDDMの引き金になる可能性を議論した意見論文でPlos Pathogen に10月10日オンライン掲載された。タイトルは「Does rotavirus turn on type 1 diabetes?(ロタウイルスはIDDMの引き金になるか?)」だ。
さてこの論文は実験論文ではないので、なぜ著者がロタウイルスがIDDMの引き金になると考えているのかについての証拠を一つ一つ紹介しよう。
- これまでIDDMの自己抗原として働くことがわかっていたIA-2とGAD65ペプチドと、ロタウイルスのVP7由来ペプチドの一部が類似しており、自己抗原特異的T細胞を刺激する可能性がある。
- 膵島やインシュリンに対する自己抗体の上昇はロタウイルス抗原に対する抗体と相関していることが多い。
- ロタウイルスの感染は膵島を障害することが、様々な動物実験で示されている。
- IDDMは20世紀後半から患者さんが増えてきている。これは、保育所で子供がロタウイルスを貰う確率が高まったからとも考えられる。
- 50万人規模の調査で、ロタウイルスワクチンを受けた子供では、IDDMの発症が41%も低下した。特に、数種類のロタウイルスをカバーするワクチンを接種した子供の方に効果が高い。
以上が著者の考察で、リストされた証拠はかなり説得力がある。もちろん、同じ結果がわが国でも通用するかは、この病気の遺伝リスクの最も重要なものが組織適合性抗原であることを考えると、調べてみないとわからない。いずれにせよ、ロタウイルス自体膵臓の障害もあるとするなら、ワクチン接種は重要な手段として推進する方がいいだろう。
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