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12月8日 サルがチキンレースゲームをしたら(11月23日号 Nature Neuroscience 掲載論文)

2020年12月8日
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集団で狩をする動物は多いが、一見協力しているように見えても、基本は自己の欲望をドライブに、あとは周りの状況を見ながら個々にアタックを繰り返すことで相手を倒す。ただ、その後の獲物の分配については、力関係に基づくルールがある(狼の例:MacNulty DR, Tallian A, Stahler DR, Smith DW (2014) Influence of Group Size on the Success of Wolves Hunting Bison.
PLOS ONE 9(11): e112884. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0112884)。 面白いことに、このパターンは知能の発達したチンパンジーでも同じで、声を掛け合いながら獲物を追い詰めるように見えても、基本は自分の欲望に基づく自発的行動が集まっただけで、人間の狩のような役割分担が分化していないと考えられているようだ(例:Boesch and Bosche, Hunting behavior of wild chimpanzees in the Tai’ National Park, American Journal of Physical Anthropology 78:547, 1989)。

このようなサルの行動の脳機能を調べたのが、今日紹介するペンシルバニア大学からの論文で、行動の課題は結構複雑だが、生理学的には昔ながらのタングステンニードルを用いて目的の領域の神経を一個づつ記録する古典的手法を用いた研究だ。タイトルは「Neuronal correlates of strategic cooperation in monkeys(サルでの戦略的協力に対応する神経活動)」で、11月23日号のNature Neuroscienceに掲載された。

最近頭の動きが鈍ってきたせいか、脳研究で用いられる課題を理解するのに時間がかかるようになった。絵入りで説明されていても、なかなか飲み込めない。よくよく読んでみると、この研究で使われたのは、いわゆるチキンレースゲームと言える課題で、自分の車を走らせてゴールを目指すときに、相手が反対側のゴールを目指して疾走してくると、そのまま勇気を奮って突っ走るか、それとも避けるか、を決断する必要がある。もちろん実際の車ではなく、向かい合ったサルの間にモニターを置き、そこに現れるサークルをそれぞれの車と見立て、向こうにあるご褒美までそのサークルを動かして囲い込む。ただ、このサークルをコントロールするジョイスティックは前か左右にしか動かせないため、そのまま前に進むと相手とクラッシュする。このとき、クラッシュを恐れずそのまま褒美にありつくと、ジュースがたくさん飲める。ただ、クラッシュすると全くジュースは飲めない。いっぽう、衝突を避ける決断をした方は、相手と比べると量は少ないが少しジュースがもらえる。ただ普通のチキンレースと違い、両方が同じ方向に避けた場合は、両方に褒美のジュースが十分もらえるが、これは相手と行動が完全に一致する必要がある。

このようなチキンレースゲームを行わせながら、サルの視線を追いかけると、突っ走る、避ける、協力する判断の時に、相手の顔、行動、ゴール、サークルなど、どこから情報を集めて判断しているかがわかる。詳細を省いて結果を述べると、サルも最終的にどうすれば一番得するかを理解でき、そのために協力関係を結んで、同じ方向に車をむけて衝突を避けるようになる。そして、視線解析から、何か一つの要員で決めるのではなく、500msという短い間に様々な情報を集め総合していることがわかる。このパターンは、野外で観察される狩での協力関係のパターンに似ていると思う。

このとき、共感や情動に関わる前帯状皮質(ACC)および、相手をみて社会的関係の判断に必要な上側頭溝(STS)の神経細胞をそれぞれ500個前後記録して、視線や行動との相関を調べ、判断の神経プログラムを探っている。

結論としては、期待通り社会的判断に際し相手の顔を見ているときにSTSの神経細胞が興奮する割合が多いが、しかしACCにも同じときに反応する神経細胞があり、それぞれ協力関係を成立させ他ときに反応することなど、相手の行動判断(例えばselfish, cooperative)ごとに異なる神経が興奮する。そして、例えば協力すると判断した時興奮した神経細胞は、その結果ジュースにありついたときにも強く興奮する。要するに、判断に関わるそれぞれの情報に対応して興奮する神経が存在し、それが組み合わさって(例えば協力するときは顔に反応する神経)一つの戦略を決めているという結論だ。

結構大変な実験だが、わかりやすい結論に絞れたわけではなく、意地悪く言ってしまうと複雑な行動の神経支配は複雑だと言っておしまいになっている感がある。とはいえ、この課題で見る限り、サルの判断は生きたサルが相手でも、人形や、モニター上のサルが相手でも変わらないという結果は興味深い。すなわち、現実とバーチャルが区別できていない。 神経科学的には何も結論できなかったが、行動科学的には興味深い研究だった。

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