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10月22日 喫煙者のニコチンによる肝臓病はバクテリアにより守られている(10月19日 Nature オンライン掲載論文)

2022年10月22日
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10月号の Nature Medicine に、様々な生活習慣と病気について、医学会のコンセンサスを形成しようと行われたメタアナリシスの結果が何報も発表されていた。野菜は心臓病や糖尿病を防ぐこと、勿論タバコは多くの病気のリスク要因になること、赤身の肉は大腸ガンと関連はあるが、タバコと肺がんや喉頭ガンほどの関連はないことなどがうまくまとめられているので、保存版としての価値がある。

特に喫煙と病気の関係は論文も多く、詳しく調べられており、病気のリスクが5つ星でグレーディングされている。5つ星は、喉頭ガン、肺がん、動脈瘤、咽頭ガンだ。勿論ガンであれば全てと相関するわけではなく、肝臓ガンは喫煙量と病気のリスクは相関がなく1つ星でとどまっている。

ところが今日紹介する北京大学を中心とする研究グループは、喫煙、特にニコチンは非アルコール性肝臓病(NFAFLD)の原因になる(従って肝がんのリスク要因になるはず)のだが、腸内細菌叢の中のB. xylanisolvensがニコチンを分解してくれてNAFLDから守ってくれているという研究だ。タイトルは「Gut bacteria alleviate smoking-related NASH by degrading gut nicotine(腸内細菌叢が喫煙によるNASHからニコチンを分解することで守っている)」だ。

この研究は、ニコチンのNAFLDとNASH発症への関わりと、ニコチン分解細菌 B. xylanisolvens の特定の2つのパートに分かれている。論文は細菌叢の報からスタートしているが、紹介はニコチンの作用から始める。

喫煙者の回腸の粘膜や便を調べると、ニコチンが著明に上昇していることがわかる。また、マウスにニコチンを飲ませると、高脂肪食による脂肪肝が促進される。そこで、ニコチンの腸上皮に対する作用を調べると、ストレスに反応して代謝を脂肪酸合成、ケトン体合成の方に引っ張るキナーゼ AMPK がリン酸化され、活性化されることがわかった。事実、上皮の AMPK をノックアウトすると、NAFLD の悪化は起こらない。

そこで、回腸上皮のオルガノイドを形成し、ニコチンからのシグナル経路を探索すると、AMPK 活性化により、スフィンゴミエリン分解酵素の安定性が高まり、上皮のセラミド合成量が高まり、これが NAFLD を悪化させることを明らかにしている。

ただ、喫煙の肝臓病との相関は高くない。この研究の参加者の回腸ニコチンレベルをベースに、ニコチンの高い人、低い人を分類しても、喫煙量と相関しない。このことは、腸内でニコチンが分解されやすい人と、されにくい人が存在することを示している。そこで、細菌叢の中でニコチン分解出来る細菌を探索し、ついに B. xylanisolvens と、それが持つ分解酵素を特定している。

最後に、B. xylanisolvens の量と NAFLD や NASH の相関を調べると、B. xylanisolvens の割合が高いほど、病気が抑えられることが明らかになった。

以上、喫煙、特にニコチンは非アルコール性肝疾患のリスク因子だが、幸いニコチン分解能を持つ細菌がこの害を除去しているという話になる。面白い結果だが、喫煙者のためのヨーグルトなどと行った本末転倒が起こらないことを願う。

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