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10月25日 エラの機能進化を探る(10月19日 Nature オンライン掲載論文)

2022年10月25日
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エラを持たない哺乳動物の発生学にとってもエラの発生は重要で、魚でエラへと発生する pharyngeal pouch は内耳を含む頭頸部の重要組織へと発生し、さらに胸腺という免疫系最重要組織もここから発生する。しかし考えてみると、発生学になじんできた私も、エラからどんな組織が進化したかについては知識があったが、エラ自体がどのように進化してきたのかを考えたことはなかった。

今日紹介するカナダバンクーバーの British Columbia 大学からの論文はヤツメウナギの胎児やギボシムシのエラの機能を調べることで、エラの進化を考えた研究で、10月19日 Nature にオンライン掲載された。タイトルは「Ion regulation at gills precedes gas exchange and the origin of vertebrates(脊髄動物進化でエラのイオン交換機能はガス交換機能に先行する)」だ。

このグループは稚魚の呼吸やイオン交換を調べる特殊なチェンバーを設計し、エラや皮膚の生理機能を調べている。実験システムについての論文はなんと1996年に遡る、ある意味でマニアックなプロの研究者だ。

この実験系を使うと、エラと皮膚別々に、ガス交換、イオン交換などを調べることが出来る。これを利用して、エラがどの機能を受け持つために進化してきたかを考えている。

というのも、脊椎動物が進化する前は、ガス交換やイオン交換はほとんど皮膚を通して行われていた。イオン交換自体は極めて複雑だが、この実験ではアンモニアやナトリウムの交換が調べられている。

皮膚で済ませていたガス交換のためのエラが進化する背景には、カラダが大きくなり、酸素を多く取り込む必要が発生したと考えられるが、おそらく脊椎動物の先祖に近いと考えられるヤツメウナギ幼生の呼吸とガス交換を皮膚とエラで比べてみると、ガス交換は身体のサイズが増大するとともにエラで行われるようになるが、イオン交換は身体のサイズに関わらず、エラと皮膚でコンスタントに行われる。

そこでさらに進化を遡って半索動物のギボシムシを、エラを持つ前方と、エラの内後方に分けて酸素吸収を調べてみると、酸素接種率は全く変わらない。ただ、低酸素状態になるとエラを持つ方が交換率が上がる。ただ、酸素の接種率と、アンモニアの交換率は全く同じように振る舞うことから、エラは様々なストレスに対し、イオン交換やガス交換を高める仕組みとして発生したと考えられる。

最後に、イオン交換に関わる分子が皮膚全体から局在してくる進化過程を調べ、ナメクジウオのエラには皮膚と比べて様々なイオン交換に関わる分子が集中してきていること、しかし半索動物では、イオン交換機能プログラムに関わるFoxlのみの局在発現が見られることを示しており、半索動物から、脊索動物、脊髄動物へと、イオン交換機能にガス交換機能が付与されていく過程を跡づけることが出来た。

以上の結果、後口動物が進化した後、前の口から食べ物をこしとるように摂取する濾過接触が始まり、そこにイオン交換能とムチン産生を持つ細胞が発生、これがイオン交換を高めるため皮膚とは独立したエラへと発展し、これがガス交換も受け持つようになるというシナリオが示された。

結構クラシカルの研究だが、エラが出来るまでの進化という、これまでほとんど手つかずの領域に踏み込んだことが評価される面白い論文だと思う。

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