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11月24日 百万年前に存在したキングコングはオランウータンの親戚だった(11月13日Nature オンライン版掲載論文)

2019年11月24日
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以前チベット地区に残る、形態学的には起源がよくわからなかった下顎骨が、骨から抽出されたコラーゲンのプロテオーム解析で、デニソーワ人のものと特定された論文を紹介したが(https://aasj.jp/news/watch/10139)DNAが保存されない時代の系統樹が推察できるようになると、これまで形態だけを基盤に続いていた多くの議論に終止符が打てる期待される。

今日紹介するデンマーク・コペンハーゲン大学からの論文は、オランウータンに近いか、ゴリラに近いかと議論が行われていたギガントピテクスの系統を歯のエネメルタンパク質から推察した研究で11月13日Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「Enamel proteome shows that Gigantopithecus was an early diverging pongine (エナメルのプロテオーム解析によってギガントピテクスが早くに分岐したサル目であることを示している)」だ。

古代ゲノム研究も含めて、デンマークは分子生物学を用いた人類学や、古生物学の中心として存在感を示しているが、この論文もその例といえる。さて、ギガントピテクスだが、ゴリラと比べてもはるかに大きく、3mの身長と350−500kgの体重があったのではと想像され、まさにキングコングと言っていい。この論文でも示されているが、地球が暖かかった時期に南中国、ベトナム、インドに分布していたことがわかっている。ヒマラヤの雪男もギガントピテクスが進化した直系の生き残りではと考えられたぐらいだ。研究では、中国赤峰市近くの洞窟から出土した約百万年前のギガントピテクスの歯からタンパク質の断片を抽出し、なんと409種類ものペプチド断片を検出している。

論文では得られた様々なエナメルタンパク質のペプチド配列が信用できるかどうかについて詳しく検討しているが、これは著者を信用することにして割愛する。さて、ペプチドの配列から推察される系統だが、最も近いのはオランウータンの仲間で、おそらく1千万年前にオランウータンの仲間から分岐したと考えられる。また、我々人類やゴリラ、チンパンジーなどを含む人科とは約2千万年前に分岐したことがわかった。ペプチドだけからなので、100%信用するとはいかないが、オランウータンに近いことは信用してもいいのではないだろうか。

以上が結果で、アジアにもおそらく様々な類人猿が存在し、オランウータンだけを残して絶滅したことがよくわかった。以前ボルネオにオランウータンを見に出かけたことがあるが、残念ながら3日間ガイドさんと探しても、観察することはできなかった。今年見ることができたゴリラやチンパンジーとちがって、地上に降りてこないためだが、このおかげでオランウータンは今もひっそりと生き残ることができたのではと思った。一度野生を見てみたい。

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