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10月18日 細胞の変形を核が検出して細胞形態を調節する(10月16日号 Science 掲載論文)

2020年10月18日

我々の細胞は押し合い圧し合いのラッシュアワー状態で存在しており、その中で自分の位置を全体に合わせてうまく変化させ、スペースを埋める必要がある。この外的な圧力を感知して細胞の形態を変化させるメカニズムについてはほとんどわかっていない。

今日紹介するスペイン・バルセロナの国立光学研究所からの論文は細胞をひしゃげさせたときに核で始まる細胞の活性化を細胞学的に解明した研究で10月16日号のScienceに掲載された。タイトルは「The nucleus measures shape changes for cellular proprioception to control dynamic cell behavior (核が細胞の形態変化を測って細胞運動の動態をコントロールする固有の受容感覚として働く)」だ。

細胞生物学の典型的プロの仕事で、適切なパラメーターを使って細胞を適切に見ること、細胞内の調節機構に熟知して、適切に阻害剤を選んで分子経路を明らかにすること、そして細胞自体を厳密にコントロールする技術を持つこと、と三拍子が揃っている。

もちろん課題も明確で、細胞を圧縮したときミオシンIIの活性化を媒介とする細胞形態の変化が起こるメカニズムの解明だ。

研究ではミオシンIIを可視化した細胞を用いて細胞に圧縮操作を加えたとき、ミオシンIIが活性化され細胞の収縮活性が高まる。この速やかで長く続く変化が、核が引っ張られ、核内膜が展開することと相関することを発見し、この核膜に始まる細胞運動の活動活性化過程を解明している。

分子阻害剤を駆使した経路研究が詳細に行われているので、全てをすっ飛ばして結論をまとめると以下の様になる。

  1. 細胞が圧力を受けて核内膜が展開すると、これを感知してphospholipase A2(cPLA2)が核膜と結合して、一種のカルシウム依存性のメカのセンサーを作る。
  2. PLAにより合成されるアラキドン酸によりミオシンIIが活性化される。
  3. この核の形態の変化は、小胞体と核膜が接近してSTIM-Orai分子が濃縮されることによる、細胞内のカルシウム濃度の上昇と強調しており、これにより受動的な形態変化を、他の原因、例えば細胞が膨大するといった変化を区別して、細胞活動とリンクさせる。

まとめてしまうと結論は簡単になったが、実際には知識がないとなかなかついていけない、しかし細胞の形態を考える上で重要な発見だと思う。

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