大正時代にわが国で考案された神経症の治療方法、森田療法は現在も多くの精神科医に採用され、受けることができる。治療の要点は、神経症で現れる不安を取り除こうとせず、自分で認識してそれについて話をするように指導する。他にもプログラムに従った作業療法が行われるが、ようするにありのままの自分を知ることが核になっている。
もちろんこの時、自分の脳の活動を知ることはないが、最近脳の活動を見ながら自分で自分の行動を理解することで症状を取り除くNeurofeedbackと呼ばれるが注目を浴びている。内省的に自分を知るのではなく、主に脳波などを通して記録されている脳の活動を通して自分の脳を知りながら、自分でこの活動をコントロールする方法を習得することで、薬を使わない新しい治療法になるのではと期待されている。
今日紹介するイェール大学からの論文は、原因不明のチック症状を示すトゥレット症候群の症状を、機能的MRIでの脳の活動画像を見せることで治療しようとする試みで、Biological Psychiatryオンライン版に掲載された。タイトルは「Randomized, sham-controlled trial of real-time fMRI neurofeedback for tics in adolescents with Tourette Syndrome (リアルタイムのfMRIを用いたNeurofeedbakのトゥレット症候群の青年のチック治療の、無作為化試験)」だ。
この研究では通常用いられる脳波の代わりに、もっと正確に脳の特定の領域の活動がモニターできるfMRIを用いている。頭以外の場所で常に経験して困っているチックを自分で再現してもらい、その時活動する補足運動野を特定する。
次にこの領域の活動を見ながら、この活動をコントロールして、自分の思うようなパターンになるよう努力してもらう。コントロールの人には、脳の活動とは関係ない最もらしいパターンを見せ、コントロールを試みるように促す。
セッションが終わると、見たのは自分の脳の活動家、それともフェークのパターンかを聞いて、コントロールできるという意識が生まれているかを調べている。
結果は驚くべきもので、コントロールと比べると、チックの回数が約5%低下している。すなわち、チックが起こる運動野をコントロールしようと活動を見ながら努力するだけで、チックの回数を減らすことができると結論している。
実際には、治療中にどのような過程が進行しているのか、もう一つはっきりしない点もあるが、脳波よりはよりピンポイントで活動のコントロールを試みさせる点が、成功の秘訣かもしれない。
その原理はともかく、脳の活動を自覚してチックのような不随意運動を減らすことができるとは驚きで、これが本当なら全く新しい時代が始まった気がする。病気だけでなく、記憶力をあげたり、運動能力を高めたり、いろいろ新手が出てきそうな予感がする。