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9月26日 帝王切開による出産の腸内細菌への影響(9月18日 Nature オンライン掲載論文)

2019年9月26日
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小児のアトピー対策がこの数年で大きく変化した。皮膚からの抗原侵入を防ぎ、腸からの抗原により免疫抑制システムを育てるという考え方に変化した。この原因は、アトピー予防にとっての幼児期の皮膚のバリアーの影響がよくわかったことと、腸内での細菌叢の免疫や炎症制御への重要性がわかってきたことが大きい。そして、新生児期の腸内細菌叢の発達について多くの研究が行われ、このブログでも紹介してきた。

今日紹介する英国サンガー研究所からの論文は経膣分娩と、帝王切開による分娩で生まれた子供の腸内細菌叢の発達を調べた論文で、その臨床的重要性で9月18日Natureオンライン版に掲載された。タイトルは「Stunted microbiota and opportunistic pathogen colonization in caesarean-section birth (帝王切開分娩児に見られる機能不全の腸内細菌叢と日和見病原菌の定着)」だ。

もちろんこれまでも帝王切開分娩児の腸内細菌叢を調べた研究はかず多く存在した。そして、経膣分娩児と比べると、腸内細菌叢の多様性の欠如や、一部の細菌種の欠損は報告されていた。

ただこの研究は314例の経膣分娩児と282例の帝王切開分娩児の腸内細菌叢を長期間にわたって観察することにより、十分統計的解析が可能なデータを集めた点が最も重要だ。そして何よりも、これまでの研究と比べても、帝王切開分娩の驚くべき影響を浮き彫りにした。

もちろんこれまでと同じで、調べる数を増やしても出産後から急速に腸内細菌叢が成長し、お母さんの細菌叢へと成長する。またそれぞれの子供で発達過程はまちまちで、人間の成長過程の違いをまさに腸内細菌叢が反映していることがわかる。しかし、この違いを決める要因を統計的に探していくと、母乳などの要因をはるかに超える高い影響が分娩の方法にあることがわかる。

実際の細菌叢の内容を詳しく調べているが、詳細を省いて簡単にまとめてしまうと次のようになる。

経膣分娩児では例えばビフィズス菌やBacterioidesのような、いわゆる腸内細菌と呼ばれる細菌が中心に細菌叢を形成しする。ところが、帝王切開児では最初の一週間はこのような典型的腸内細菌はほとんど存在せず、代わりに病院の環境に存在する常在菌が多く定着する。一方、これまで変化が大きいと指摘があった乳酸菌などはほとんど変わりがない。そして、母親の細菌叢と比べることで、結局この原因が母親の細菌叢が伝わらないことによっていることを示している。

中でも問題は、常在菌の中に日和見感染の原因菌が多く含まれることで、当然免疫が低下している新生児で、母乳からの抗体など抵抗力が得られない場合は問題になるだろう。

幸い、1ヶ月ごろから細菌叢は正常型へと急速に変わっていくので、今後はこの新生児期の大きな違いが将来にどのような影響を持つのか、気の長い研究が必要になると思う。実際帝王切開の長期効果として肥満、喘息、アトピーなどが指摘されているがこれらは全て腸内細菌叢の発達と関わりがある。このコホートから将来さらに重要な発見があることを期待する。

いずれにせよ、母親からの細菌叢を移す重要性は最近ますます強く認識されている。例えば虫歯菌や歯周病菌が感染するとして子供とのキスを避けるように指導しているのを見かけるが、特定の菌を避けて清潔を求めるあまり、子供を危険に晒してきたことは、最近の多くの研究が示していることだ。もっと自然な親子のコンタクトを再評価する時が来たように思う。

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