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4月24日 相分離によるRAS分子活性化 (5月13日号 Cell 掲載論文)

2021年4月24日
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何度も相分離についての研究を紹介してきたが、基本的には難解な話として大学院生以上に向けて書いてきた。今日も同じように相分離による細胞内シグナル活性化の話だが、最近専門向けの論文紹介が続いたので、今日は相分離に関わるテーマをなるべくわかりやすく説明したいと考えている。わかりやすく説明するために、かなり詳細は飛ばしているので、詳しく知りたい専門知識のある方々はぜひ元の文献を読んでいただきたい。

紹介したいのはカリフォルニア大学サンフランシスコ校から発表された研究で、一部の発ガン遺伝子の活性化メカニズムを探る中で、相分離により発ガンのシグナル発生拠点が形成されることを示した、ガン治療を考える上でも重要な発見だ。タイトルは「Kinase-mediated RAS signaling via membraneless cytoplasmic protein granules(RASシグナルを、細胞膜の関与なしに形成される細胞質のタンパク質粒子が媒介する)」だ。

一般の方はタイトルを見ても何を言っているのかわからないと思うので、気にせず読み続けてほしい。

さて、RAS分子は発ガンの鍵になる分子で、多くのガンに関与している。一つの関与の仕方は、RAS自体に突然変異が入り、本来なら外界のシグナルでコントロールされるところが、RAS自体が暴走して発ガンのシグナルが入る場合で、例えば膵臓ガンなどは半分以上がこのタイプになっている。

もう一つは、RASの活性を調節している膜型チロシンキナーゼ受容体が、周りのコントロールを受け付けずに暴走してしまうケースで、例えばEGF受容体の変異により発生する肺ガンなどはその例だ。

この研究では、RASを外界のシグナルに応じて調節しているチロシンキナーゼ受容体遺伝子が、何らかのきっかけで他の遺伝子とゲノム上で結合してしまって、両者が合体したキメラ分子を形成することで、チロシンキナーゼ受容体が暴走するケースについて調べている。実際には、肺ガンを発生させる、微小管結合タンパク質EML4とチロシンキナーゼ受容体ALKが合体したタンパク質が、なぜRASシグナルを活性化できるのかを調べている。

こうしてできたEML4-ALKキメラタンパク質は、膜上で発現する部位が欠損して細胞質内に存在することがわかっている。これまでの考えは、合体した側のEML4部位でいくつかのキメラ蛋白がまとめられると、ALKが暴走を始め、RASを活性化するというものだった。

これに対し、この研究では、ただいくつかのキメラ分子が結合し合うというような単純なものではなく、相分離という現象が起こって、多くのEML4-ALKが濃縮された塊を作ることで、その塊の中にRASを活性化するための様々な分子を集合させ、発ガンのシグナルを発生する拠点になることを証明している。

ここでいう相分離とは、白紙の液晶板に、急に様々な字が現れる現象を考えて貰えばいい。この場合は電気シグナルで相分離を起こすことで、目に見える凝集を起こしている。これと同じことが、細胞内の様々なところで起こることで、関連する分子だけがうまく集まれるようになっていることが急速に明らかになってきている。

EML4-ALKの場合、濃度の濃い凝集は、分子同士が絡まり合うことで形成され、その中にRASやRASとALKをつなぐ分子などが凝集する。実際、これらの分子の細胞内の局在を調べると、膜とは別の場所で粒子状の目に見える点として集まっている、すなわち相分離していることがわかる。

この研究ではどのような条件でEML4-ALKが相分離に至るかを詳しく調べているが、全て割愛する。大事なことは、人工的に相分離を作りやすいタグ(HOtag)を結合させる系で、相分離を人工的に起こしてやると、ALKシグナルは暴走して、RASを活性化することがわかっている。

また、様々なタイプのEML4-ALKキメラガン遺伝子を実際のガンから取り出し調べると、ほとんどの場合相分離を起こすことも確認している。そして、このような凝集体を処理する細胞システムのオートファジーを抑制すると、凝集体が処理されずに残って、シグナルが高まることが示されている。すなわちオートファジーを高めて凝集体を処理するとか、あるいは凝集そのものを抑制する方法も、将来のガン治療につながることを示している。

結果は以上で、他にも同じようなキメラガン遺伝子でも同じことが起こっていることも示しているが、割愛する。

猫も杓子も相分離という皮肉な見方もあるが、この観点で新しいガン治療法が開発されることを期待して、一般の方にも伝えたいと思った。理解していただければ本望だ。

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