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7月23日 分子標的薬を組み合わせた論理的治療(7月21日号 Nature 掲載論文)

2021年7月23日

今日、明日と、最近気になった分子標的治療について紹介したい。まず今日紹介する上海ガン研究所とオランダ・ガン研究所からの論文は、甲状腺ガンや肝臓ガンなど様々なガンに用いられているレンバチニブの肝臓ガンへの効果がEGFR 受容体と組み合わせることで大きく高まることを示した研究で、7月21日号Natureに掲載された。タイトルは「EGFR activation limits the response of liver cancer to lenvatinib(EGFR活性化が肝臓ガンのレンバチニブに対する反応を制限する)」で、7月21日号のNatureに掲載された。

分子標的薬は一般に一つの分子を特異的に抑制することを目標にするが、一部のキナーゼ阻害剤は、複数のキナーゼをまとめて阻害する力を期待して利用されている。我が国のエーザイが開発したレンバチニブはその代表で、VEGFR、FGFR、PDGFR、c-Kit、RETなどのシグナルを同時に抑えることが知られ、特に手術ができない肝臓ガン、甲状腺ガンに世界中で利用されている。

ただ、肝臓ガンの中でレンバチニブに反応するのは2割程度で、効果を上げるための研究が進んでいた。この研究では、まず、レンバチニブに反応しなくなったガン細胞のリン酸化に関わる酵素をCRISPR/Cas9でシラミ潰しにノックアウトし、レンバチニブの作用を再活性化する分子を探索し、EGFRシグナル経路をノックアウトすると、肝臓ガンがレンバチニブに反応する様になることを発見する。この発見が、研究のハイライトで、あとはEGFRを阻害する薬剤との組み合わせで同じ効果が得られるか、細胞株を用いて調べ、以下の結論に達している。

  1. EGFR発現の高い肝臓ガンでゲフィニティブなどのEGFR阻害薬が、レンバチニブと強調して高いガン抑制活性を発揮する。
  2. 複数のキナーゼを阻害するからと言って、レンバチニブと同じ効果があるわけでははなく、ソラフェニブはEGFR阻害剤と組み合わせても効果がない。これは、レンバチニブがソラフェニブにはないFGFRを阻害活性を持つからで、EGFRを高発現する肝臓ガン細胞の場合、FGFRとEGFRの両方を阻害して、下流のMEK-ERK経路とともに、PAK―ERK経路を抑制することで、FGFR-MEK-ERK経路を完全に遮断でき、ガン増殖を抑えられる。
  3. レンバチニブの場合、FGFR阻害効果だけではなく、VEGFR阻害による血管新生を抑制するとともに、NK細胞の活性を高めることも、ガンの制御に貢献している。

以上の結果に基づいて臨床利用についての研究を行い、

  1. ガン組織検査でEGFRの発現が高い患者さんは、レンバチニブの効果が低く、言い換えるとレンバチニブで増殖が抑制されると、EGFR経路を用いてFGFシグナルをバイパスして、レンバチニブ効果を制限している。
  2. 治療に反応しなくなった12例の肝臓ガン患者さんを対象に、レンバチニブとEGFR阻害剤ゲフィニティブを併用すると、4例でpartial response、4例でガンの進行抑制が見られた。

結果は以上で、現在利用されている薬剤の組み合わせで効果が得られていることから、有望な治療法になると期待できる。ただこれほど論理的な治療の場合、万策尽きて利用するのではなく、乳ガンと同じ様に、ファーストラインの治療として、アジュバント治療、さらにはネオアジュバント治療としても使っていける可能性がある。これが成功すると、肝臓ガンの治療成績は飛躍的に高まるではと期待している。

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