毎年検診を受ける様にしているが、ガンに関する検査はそれなりに何回か要精密検査と診断され、そのたび精密検査を受けた。さらに、属していた先端医療財団でPET-CTの検診を始めた時、一度検査を受けたこともある。長年そのままにしている唾液腺の良性腫瘍2個が綺麗に検出され、さすがと感心したことがある。いずれにせよ、ガン検診自体はまだまだトライアンドエラーの段階にあると言っていいだろう。しかし、早期発見により治癒確率が上がるということは、医療費削減が見込めるということで、個人の満足だけでなく、ガン治療のコストが上昇し続けている昨今、検診によるガンの早期発見の重要性は増してきている。
特に期待されているのが血清中のDNAからガン特異的突然変異を拾い出す検査で(https://aasj.jp/news/watch/10135)、これまでのガンマーカーと合わせることでさらに精度を上げられることが示されている(https://aasj.jp/news/watch/7955)。
今日紹介するジョンズホプキンス大学からの論文は、この16種類のガンに見られる突然変異とガンマーカーを組み合わせる検査で陽性と判断された人をPET-CTなどを用いてさらに検証し、この方法が現実的かどうかを調べた研究で7月3日号のScienceに掲載された。タイトルは「Feasibility of blood testing combined with PET-CT to screen for cancer and guide intervention (血液検査とPET-CTの組み合わせがガンのスクリーニングと治療方針設定に役立つか)」だ。
ガンの早期発見のためのスクリーニングが、社会的に意味があるのか今も議論が続いている。というのも、私の場合もそうだが、疑いと診断されると、その後様々な検査を受けることになり、最悪精密検査時の事故すら起こりうる。このコストを考えると、早期発見が可能でも、社会的には意味がないという議論だ。
この研究もこの点をかなり意識した計画になっている。最終的に9911人の65歳から75歳の医療保険システム・ガイジンガーの女性会員から採血し遺伝子検査とガンマーカーを調べ、490人(4.9%)が陽性と診断されている。ただ、この検査は血液細胞の変異を拾いやすいので、再検査を行うが、この時ゲノムを含む専門家が判断するので、かなり複雑な過程になる。この結果、最終的にガンの疑いとしてPET-CT検査に134人が回っている。
ただ、この2回にわたるテストが半年以上かかることが問題で、その間他の検査で陽性としてガンの治療に回った人が3人存在する。さらに、最初のテストで陰性と診断された人の中から67例の人が何らかのガンを発症している。
一方、PET-CTに回された人の中では26例が実際のガンと診断された。とすると、血液検査陰性でガンになった人より数が少ない。ただ、このうち12例は発見が早く、手術による治療を受けている。
この研究の難しいところは、保健システムの会員として別にガン検診を受けていることで、結局普通のガン診断では見つからなかったが、血液検査で発見されたガン患者さんは15例になる。
一方、PET-CTのあと、バイオプシーなどでガンではないと診断された方も22例あり、特に検査による問題は起こらなかったが、血液検査をしても、このリスクはつきまとうことがわかった。
結果はこれだけで、著者らは一定の早期発見が可能なこと、発見の難しい卵巣ガンの発見率が高いことから、かなりポジティブに評価している。しかし、時間がかかることなどを考えると、個人的には我が国の総合的な方法も捨てたものではないと思う。また、DNA検査については、突然変異を探す方法は限界がある様に思った。今後はメチル化DNAを使う方法などに置き換わっていく様な気がする。